独り−29


キラは女の子


クルーゼから艦内での自由を与えられたキラは、アスランと行動を共にするようになっていた。

今も、アスラン達がモビルスーツの調整をしているのをのぞき込んでいる。



「これがイージスで、あれがストライクでしょ。

 イザーク達の乗っているのは何て言うの?」

「イザークがデュエル。

 ディアッカがバスター。

 ニコルがブリッツ、だな。

 五体まとめて、Gと呼ぶことになったよ」



アスランは作業をしながら、キラの疑問に答えていく。



「G?なんで、って、・・・あぁ、起動時に出るGUNDAMっていうののこと?」

「ガンダム?・・・ああ、そうだな。

 頭文字を続ければ、GUNDAMか・・・」

「ストライクの調整は、やらないの?」

「あれはラスティの機体になるからな。

 パイロット本人がやらないと、扱いづらくなるんだ。

 だから、ラスティが復帰してからだよ」

「ふ〜ん」



じゃあ、私がいじっちゃまずいのか。

暇なんだけど・・・、ラスティを困らせるわけにはいかないわね。



キラは周りを見回し、ちょっと首を傾げた。



「なんか、慌ただしいのね」



艦内放送は無いし、戦闘配備ってわけじゃないみたいなんだけど。

・・・アスラン達も落ち着いてるし。



どうやら、モビルスーツが何機か発進するようだった。



「艦が一隻、消息を絶ったらしい」

「ザフトの?」

「いや、プラントのではあるが、・・・詳しくは聞かされていない」

「それじゃあ、あの人達は探しに行くの?

 無事に見つかるといいけど・・・」



***



「アスラン、キラ。

 二人とも、お食事ですか?」



居住区へ向かう二人に、後ろから声が掛かる。

振り向いたキラとアスランの視線の先に、いつもの3人がいた。



「ニコル。イザークとディアッカも。

 3人も食事?」

「ええ。後は、実際に機動させてみてからです」

「実際に、って・・・」

戦うの?



心配そうに顔を曇らすキラに、すぐ否定の言葉が返る。



「実戦ではないです。模擬、くらいはやると思いますが。

 ・・・困ったな。そんなに心配しないでください、キラ」

「でも・・・」

「俺達の腕が信用ならないか?」

「これでも、俺達はエリート、って言われてるんだけどなぁ」

「この赤い軍服は、伊達じゃないんだが」

「・・・赤?」



そういえば、アスラン達4人だけが赤いのを着ているわ。

あ、ラスティのパイロットスーツが赤だったから、5人か。

他の人は、緑で。隊長さん達は白だったわよね。



「アカデミーの成績が良いと、この赤が着られるんですよ」

「じゃあ、みんな優秀なのね。

 でも、それと心配するのは、別よ。

 友達が、危険なことをするのは、イヤだわ」



『友達』の一言に、3人はちょっと嬉しくなった。

キラが軍を嫌いらしいのはわかっていたし、初対面では怖がられていたのにも気づいている。

そのキラが軍人である自分達に好意を持つようになっているのだ。

心配してくれているのも、その証。

しかし、この程度で心配されては、実際に戦闘になったらどうするのか?



「キラ・・・」



アスランがキラの頭に手を乗せ、顔を覗き込む。



「みんなを困らせるんじゃないよ。

 俺達は軍人なんだから、これは必要なことだ。

 実戦で不具合が出たら、その方が危険なんだ。

 わかるだろう、・・・キラ?」

「ほんとに、・・・大丈夫?」

「信じろ、って」

「僕達は、ちゃんと訓練を積んでいるんです」



言って、ニコルはちょっと拗ねたような顔をしてみせた。



「・・・素人のキラに動かせた機体ですよ。

 僕らに出来ないと思われたら悲しいです」

「あ、そ、そんなつもりじゃ・・・」

「あはは。わかってますよ」

「おい」



と、突然イザークが声を掛けた。



「何処まで行くつもりだ?」

「何処って・・・、あれ?」

「あ、ヤダ、通り過ぎちゃってる・・・」



話に夢中になって行き過ぎてしまった、イザークを除く四人が顔を見合わせる。

普段ならしないだろう、うっかりに、皆、照れ笑いを浮かべてイザークの元へ戻った。



*** next

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