独り−28


キラは女の子


こいつが、キラの幼なじみ?

確かに見た目は、キラに聞いていたとおりではある。

たが・・・、軍人だと!?



「キラは、ザフト軍に保護された。

 それで間違いないんだな?」

「そうよ」

「まぁ、そいつらが原因だったんだからそのくらいして当然か」

「カガリ。まるでザフト軍だけが悪かったような言い方をしないで」

「攻めてきた方が悪いさ。

 そのせいで、コロニーが崩壊したんだからな」

「コロニー崩壊の直接の原因は地球軍の戦艦よ。

 あんな、あんなところで、あんな火力。

 それに、・・・そうよ、なんであんなところに地球軍の兵器があったの?」



キラの問いに、カガリはつい目を逸らしてしまった。

それでキラにも、予想がつく。

カガリはキラの隣のアスランをチラッと見た後、キラに向き直った。



「キラはいつこっちに戻れるんだ?

 なんだったら、艦をまわすぞ。

 もちろん、これはキラだから特別扱いってわけじゃない。

 ・・・どうした?」



オーブに行ったら、アスランと会えなくなる。

そんなのイヤよ・・・。



「ちょっといいかな」



キラは唇を噛んで、俯いてしまっている。

そんなキラを見て、アスランが口を挟んだ。



「キラはしばらくこの艦に滞在する予定になっている。

 それはキラ自身の希望でもある。

 そして、この艦は作戦行動中だ。

 オーブの艦に近づいてこられては支障があるな。

 もうひとつ、理由があるが・・・。

 君には言えない」

「言えない、だと!?」

「君の父上は知っているはずだ。

 キラの安全の為には、今はこのままここにいた方がいい」

 

そうだ。

オーブではキラを守れない。

ブルーコスモスにキラの秘密が漏れては狙われてしまう。

コーディネイターを嫌う彼らはザフトやプラントには現れにくい。

それに・・・



もう、キラを手放すものか。



***



「よぉ、アスラン、キラ」

「・・・ガモフに戻ったんじゃなかったか?」



昨日艦を移ったはずのディアッカと、ヴェサリウス艦内でばったりと出会った。



「やること終わったら、暇でね。

 キラに昨日、面白い通信が入ったって?」

「面白くないです・・・」



ディアッカの笑いを含んだ問いかけに、キラは不機嫌そうに答える。

そんなキラを不思議に思ったディアッカはアスランに視線を向けた。



「・・・なにを怒ってるんだ?」

「いや、その通信でちょっと言い合いになったんだ。

 それと、隊長に手伝いを断られたのが不満らしいんだけど」



・・・ここにいていい、理由が欲しいんだもの。



苦笑しながら答えるアスランに、キラの気分はどんどん下降していくようだ。



「なんだ、手伝いって?」

「ここにいて何もしてないのが心苦しいって言うんだ。

 だが民間人のキラに、なにかさせるわけにいかないだろう」

「そりゃそうだよな。

 こうやって自由に動き回るのだって普通は駄目だからな。

 それで、言い合いってのは?」

「それが・・・」



言いよどむアスランに、視線がキラに向かう。



「だって。・・・だってカガリったら!

 よく知りもしないで、あんなこと!」

「キラ、キラ、落ち着いて」



アスランがキラを落ち着かせようと、キラの頭を撫でる。



「キラが怒らなくてもいいんだよ」

「何を言われたんだって?」

「たいしたことじゃないんだがな。

 俺がキラを騙してるって言われたんだよ。

 軍人なんか信用するんじゃない、と」

「ふ〜ん」

そんなことでねぇ。



「ディアッカだって、イヤでしょう?」

「べっつに〜」



どうでもよさそうに、だが即座に否定され、キラは驚きの目を向けた。



「なんで・・・」

「キラがさっき言っただろ。

 『知りもしないで』ってな。

 知らない人間が何を言おうと、どうでもいいよ、俺は。

 ま、アスランは、キラの友達に嫌われたくないかもしれないけどな」



言われてキラがまた暗い顔になるのを見て、困ったディアッカは、さっさと立ち去ってしまった。



「カガリ、ほんとは優しいのよ。

 ちょっと、思いこみが激しいけど。

 せっかく、アスランを紹介できると思ったの。

 なのに、あんなこと・・・」



キラにとってカガリは、双子の姉というよりも、親しい友人なのだ。

ヘリオポリスでは、あまり人と親しくすることが無かったので、アスランのことを話してあるのはカガリだけ。

だから、キラがアスランに会えて嬉しい気持ちをわかって欲しかった。



*** next

カガリ、嫌いじゃないんですけど・・・
(アスカガにならなければですが)
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