独り−26


キラは女の子


「やっぱり、カガリ・・・」



キラに通信をしてきたのは、オーブに住む双子の姉だった。

悪い予感が的中したことを確認し、キラは肩を落とす。



これ、絶対カガリの独断よね。

こういうの、まずいんじゃないかな・・・?



「あれが、キラの?」

「そう。彼女は知らないはずだけど」



キラとアスランが艦橋に着くと、そこには金髪の少女が映し出されていた。

緊張しているらしく、顔がやや強ばっている。



確かに、キラと似ている、・・・か?



双子だというだけあって、顔かたちは似て見えた。

だが、受ける印象が違う。

それは、話し出すと顕著に現れた。



「キラ・・・。ほんとにキラなんだな!」



相手に姿が見える位置まで移動したキラに、カガリは身を乗り出す。



「ええ、カガリ。

 心配をかけてしまったのね」

「そうだ。なんで、すぐ私へ連絡して来ないんだ。

 おまえが避難所に入らなかったと聞いて、ぞっとしたぞ!」

「・・・ちょっと待って、カガリ。

 なんで、それを知ってるの?」



そんなにすぐに把握できるものだろうか?

疑問を口にするキラに、カガリは説明した。



「・・・おまえに会ったやつがいる。

 俺達と同じくらいの女の子を避難所に押し込んだだろう。

 あいつは、私の代わりにあそこに行ってたんだ。

 もちろん、おまえのことは知らないけどな。

 話を聞いて、きっとキラのことだろうと思った」

「カガリ・・・」



カガリには、キラが思った以上に、キラのことを心配する要素があったのだ。



「ごめんなさい、カガリ」

「・・・・・・・・・はぁ。もう、いいよ。

 キラが生きていて、良かった」



すまなそうに謝るキラを見て、カガリは緊張を解き、大きく息を吐く。

そんなカガリに、キラは嬉しくなった。



たとえ姉妹と知らなくても、カガリはこんなにキラを思ってくれている。



ほんとうに、私って・・・

周りを見ていなかったのね。

ちゃんと、私のことを見てくれている人がいたのに。



自然、キラの顔に笑顔が浮かんだ。



「ありがとう、カガリ」

「ああ。もう二度と、嫌だからな。

 それで、本題に入るぞ」



言いながら、カガリの顔つきが真剣なものになる。



「キラがなんで、ザフト軍の艦にいるんだ?」

「え?なんで、って・・・?

 連絡行ってるでしょう?」

「コロニー崩壊に巻き込まれそうになったところを助けた、ってな。

 だがな、軍の報告なんか、鵜呑みにできるか」

「な、ちょっと、カガリ!」



きっぱりと言い切るカガリに、キラは慌てる。

ここはその軍の艦の艦橋なのだ。

つまりキラの周りには、軍人が大勢いる。

そんなところで、こんな発言をするなど、以ての外だ。



その時、くっくっくっ、と堪えるような笑い声が聞こえてきた。

キラが振り向くと、それはクルーゼだった。



「いや、正直なお嬢さんだね。

 キラ・ヤマト、気にすることはない。

 このくらいはっきりしていると、気持ちがいい」

「はぁ、ありがとうございます」



なんで、私が礼を言ってるんだろう?

ああ、もう、誰かカガリを止めてよ。

お目付役の人がいたはずなのに、どうしたのよ・・・。



キラはため息を一つ吐き、カガリに向き直る。



「じゃあ、なんでだと思うのよ?」

「拉致されたとか」

「・・・なんで、私がザフト軍にさらわれるのよ?

 理由が無いでしょう」

「・・・・・・・・・綺麗で可愛いから・・・とか?」

「カガリ、適当に思いつきを口にしないで」



ただただ、キラの心配をしただけのカガリは理由までは考えていなかったらしい。

突然目を逸らしておかしなことを言うカガリに、キラも口調がきつくなっていく。



「本気で言ってるわけではないでしょう、カガリ」

「でも・・・」

「いい加減にして。

 いくらなんでも、失礼に過ぎるわ。

 自分の立場を考えて発言しなさいな」



と、カガリがキラをまじまじと見つめ、呟いた。



「おまえ、変わったなぁ・・・」



*** next

カガリ登場
どうやって彼女が一人で通信を繋げたかは、私にも謎・・・

先の話でちょっと触れていますが
ヘリオポリスに移る前、キラはオーブでカガリと過ごしています
で、そうするとキラが最初にモルゲンレーテの工場区にいた理由が変なので
あそこでキラが追いかけたのは、別の女の子、ということにしてあります・・・
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