独り−23


キラは女の子


「アスランの仲間は、みんな優しいのにね・・・」



案内をしてくれていた3人が出ていくと、キラはため息を吐いた。



やっぱり、まだちょっと怖い。

彼らが、ではなくて、・・・ここが。

ひとりでいるのは・・・。



いろいろなところを回った。

艦内は広くて、移動する時間の方が長い。

ニコルとディアッカがいろいろ話題を振ってくれて。

アカデミーでのアスランの話とか。

イザークとアスランがライバル、とか。



・・・気を使ってくれてるのがわかった。



軍人ってもっと怖いんだと思ってた。

戦争をする人も、テロをする人も、変わらないと思っていた。

銃を持つ人が、怖かった。



キラは、アスランと再会した場面を思い出す。



アスランの手を払ってしまったのは、銃とナイフを見たせいだ。

あの時、私はアスランを傷つけてしまった。



私は、戦争について何も知らなかった。

ただ、中立国の中で、自分のことばかり。



「守りたいんだ、か」



誰だって、好きで戦争したりしない。

大切なものを守るため。

守りたいものがあるから、戦える。

そんなこともわかってなかったんだ・・・。



キラはもう一度ため息を吐き、硝子の向こう、格納庫に目をやった。



「それでも。あそこにあるのは、戦争の道具・・・」



***



「アスラン。隊長さんのお話は、終わったの?」



扉の開く音に振り向いたキラは、そこにアスランを見て笑顔に変わった。

だが、アスランは笑顔を返してくれない。

不安になったキラは、顔を曇らせた。



「・・・どうしたの?」

「キラ、ちょっと・・・、一緒に来てくれ」



キラは壁を軽く蹴り、アスランのもとへ。

伸ばされたアスランの手をとりながら、その顔をうかがう。



「どこへ?」

「・・・モビルスーツのところだ。

 嫌だろうが・・・、すまない」



アスラン・・・

アスランには、わかっちゃうのね。



言わなくてもわかってくれるアスランが嬉しくて、キラは微笑みを浮かべた。

抱き留められた勢いのまま、アスランの首に抱きつく。



「キ、キラ!?」



唐突なことに、アスランも慌てる。

が、すぐにキラの背に腕をまわして支えた。



「ありがとう、アスラン。

 嫌だけど、大丈夫なの。

 アスランが傍にいてくれれば、ね」



キラはアスランの首にまわしていた手を解く。

気づいたアスランも、腕をゆるめた。



「ああ。もちろん、一緒にいるよ」

「じゃあ、行きましょう。

 ・・・待ってるんでしょ?」



***



「あの、みんなが集まっていた、モビルスーツへ行くの?」

「キラが乗ってきてくれたやつだよ」

「ストライク?

 でも、なんで?

 私、変なことしちゃったかしら?」

「たぶん・・・」



キラの手を引きながら前を進んでいたアスランが、ちらっとキラを振り返る。



「キラには憶えが無いと、思ったよ、俺も」



言いながら、アスランはちょっと呆れているようだ。

だが、キラには思い当たることが無い。



「あのモビルスーツの起動をした時のこと、憶えてるかい?」

「え?OSを書き換えた時のこと?

 だいたい、憶えてるわよ、もちろん。

 昨日のことだもの。

 ・・・OSがおかしいの?私、失敗した?」

「いや、失敗したかどうかはわからないんだが・・・」



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