独り−22


キラは女の子


「えーっ、もう行っちゃうのかよ」



見舞いに来たキラを含めた4人が医務室を去ろうとするのを、ラスティが不満そうに見た。



「怪我人はおとなしく寝てろ、っての」

「俺達だって、暇じゃないんだ」

「そうですよ。これから艦内を案内するんです。

 ね、キラ」



双方を見渡してから、キラはラスティにすまなそうに言う。



「あの、まだ当分ここにいると思うので。

 艦の中には興味ありますし。

 一度ちゃんと案内してもらわないと、迷子になりそうなんです。

 また、来ますから」



***



「迷子になり易いんですか?」

方向音痴?



「普段、気を張ってる時はならないですよ。

 歩きながら考え事をしていると、たまに・・・///

 気がついたら全然知らないところにいたなんてこともあったんです。

 ・・・月にいた頃のことですけどね」

「三年も前の話ですか。

 コロニーではなかったんですか?」

「もちろん」

あそこでは、気を付けてたもの。

泣いたってアスランはいないから・・・



暗い顔になってしまったキラに、ニコルたちもなんとなく事情を察する。



「それなら、艦中を案内しなくちゃいけませんね」

「そうだな。間違って危険なところに行くとまずいだろう」



***



「ここ、って最初に皆さんとお会いしたところですよね?」

「ええ。パイロット控え室です」

「ロッカーと休憩所だな」



中に入ると、大きな硝子の向こうが見える。



「格納庫?」

「モビルスーツです。

 ほら、整備班の人たちが、メンテナンスをしてるのが見えるでしょう?」



確かに、いくつものモビルスーツが並んでおり、それぞれの周りを数人ずつ動き回っていた。

だが、そのうちの一つだけ、妙に人だかりがしている。



「・・・変ですね、何かあったんでしょうか?」

「俺達の機体じゃないな」

「おそらく、アスランかラスティ・・・じゃなくてキラが乗ってきたやつだ」



と、そのコックピットの傍にいた一人が、イザーク達に気づいた。

手を、振ってくる。



「・・・なんだ?」

「呼んでいるようだな」

「あ、でも・・・」



キラに困ったような視線を向けてくる3人に、キラは笑顔で返す。



「行ってください。お仕事でしょう?

 お仕事でしょう?

 ここで待っていていいでしょう?」

「すみません」

「すぐ戻れると思うからさ」



***



「なにを騒いでいるんだ?}



イザークの言葉に、整備士達は顔を見合わせる。



「あの、クルーゼ隊長から連絡がいったんじゃ・・・」

「隊長?」

「いいえ、僕達はたまたまパイロット控え室にいただけですよ。

 えっと、誰かが呼んでいるようだったので出てきたんです」

「問題があったのか?」

「あ、はい。この・・・」



一人の整備士が背後のモビルスーツを指さす。



「これのOSが起動できないんです。

 システムがロックされていて」

「は?誰がそんなことを?」

「私達じゃないですよ!」



周りに集まっている整備士達が揃って首を振った。



「地球軍のナチュラルにこんなの無理だと思うんです。

 それで、皆さんの誰かかな、と・・・」

「俺達がそんなことする必要がどこにある」

「確かに、地球軍の作ったものなら、そんな精巧とも思えませんけど」

「つーかさ。俺達の機体にはロックなんてかかってなかったよな」

「はい。まるでお粗末なシステムしかなかったです」

「・・・この機体、誰が乗ってきたやつだ?

 アスランか?それとも・・・」

「俺じゃない」



背後からの声に振り向くと、アスランが近寄ってきていた。

クルーゼを伴っている。



「その機体は、キラが乗ってきたものだ」



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