独り−20


キラは女の子


ニコルがキラと話をする中、イザークはそっと席を立った。

二人分の食事を用意しているアスランの横に行き、小声で話しかける。



「アスラン、隊長から伝言だ。

 先に1人で来るように、と」

「キラを1人にするわけには・・・」

「俺達が面倒を見ろ、ってことだ」

「しかし、キラは・・・」

「昨日より、ずっと落ち着いているように見える」



二人の視線の先では、キラがニコル、ディアッカと笑い合っている。

アスランが傍にいる安心感か、キラはリラックスしているようだ。



「この艦にいる間、ずっとおまえが付き添っていられはしない。

 早いうちに、少なくともこのメンバーには慣れてもらわなくては。

 多少の荒療治は必要だぞ」

「・・・わかってはいるんだがな」



***



「キラさん、僕らの名前、憶えてます?」

「あ、と、確か・・・、ニコルさん?ディアッカさん?イザークさん?」



キラは、ニコルが指し示す人の名前を順番に挙げていく。



「よかった、憶えていてくれてますね。

 きちんと自己紹介できなかったんで、ちょっと心配してたんですよ。

 ちなみに、ニコル、って呼んでくださいね」

「え、でも・・・」

「キラさん、ラスティのことだけ呼び捨てなのはずるいです」

「・・・」



拗ねたような顔をしてみせるニコルに、キラも笑いを誘われた。



「うふふ。わかりました、ニコル。

 私のことも、キラ、でいいです」

「じゃあ、自己紹介のやり直しですね。

 僕は、アスランの同僚のニコル。

 よろしく、キラ」



にっこり笑って差し出されたニコルの手を、キラも笑顔で握る。



「私は、ヘリオポリスの工業カレッジの学生です。

 アスランとは幼なじみで、月でお隣に住んでました。

 こちらこそ、よろしく」

「俺もアスランの同僚だ。

 ディアッカ、でいいぞ。

 俺も、キラ、って呼んでいいか?」



ニコルの向こう側からディアッカが身を乗り出してきた。



「はい。よろしく、ディアッカ」

「俺も、イザークでいい」



背後からの声に、キラが振り向くと、食事を持ったイザークがアスランと共に立っている。

キラは慌てて立ち上がり、受け取った。



「ありがとう、イザーク」



***



「アスラン、どこかに行っちゃうの?」



アスランが一人で隊長のもとに行くと聞かされ、キラの笑顔が曇ってしまった。

不安そうに見つめられると、アスランの意志が鈍って困る。



「キラも・・・」

「アスラン、彼女をひとりじめは狡いですよ」



つい言葉を翻そうとしたアスランを、ニコルはたしなめた。

そして、キラに向かっても諭す。



「アスランには、この艦内でも任務があります。

 いつでも貴女についていることはできません。

 ・・・一緒にいるのが僕らでは、駄目ですか?」

「いえ・・・、いえ、そんなことはないです。

 ごめんなさい、つい・・・」



ちょっと悲しげなニコルに、キラは慌てて首を振った。



そう、たぶん、平気。

3人とも、昨日とは気配が違うもの。

イザークも、昨日のように怖くない。

アスランがいるせいばかりではなく・・・。



「悪いな、キラ。

 上官の命令では逆らえない」



アスランは苦笑しながら謝る。



「しばらく彼らと行動していてくれ。

 艦内を案内してもらうといい」

「艦の中を?」

「キラは嫌いかもしれないが。

 軍艦の中を見る機会はあまりないよ」

「そう、ね・・・」



確かに、こういう大きい艦は珍しいわよね。

それに、アスランの負担になっちゃいけないし。



「ああ、ラスティの見舞いもしてきてくれないか。

 俺もまだ、行ってないんだ」

「あ、そうね」

「ラスティは退屈しているみたいでしたからね。

 貴女が行けば、喜びますよ、絶対」



*** next

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