独り−18


キラは女の子


「あ・・・、え・・・?

 えっと・・・、・・・・・・・・・///」



突然のことに、キラの思考がついていかなかった。

アスランがキラを見下ろしている。

やっとキスされたことに気づいて、キラは真っ赤になった。



「・・・あ、あれ?さ、誘うって?え?・・・えーっ!?」



アスランの言った言葉を思い出し、やっと意味が分かる。



「ち、ちが、違う、の・・・っ!」



ほんと、変わってないな・・・、キラ。

鈍いぞ。

こんなんで、ひとりで大丈夫だったのか?



顔を赤くしたまま慌てふためくキラに、アスランは気が抜けた。

腕の力を抜き、顔を伏せる。



と、アスランにのし掛かられたキラは身動きがとれなくなった。



「ア、アスラン?」



恐る恐る声を掛けると、アスランから笑い声が漏れる。



「ちょ、ちょっと、アスラン!?」

「クックックッ、・・・アハハハハっ」

「アスラン・・・」



笑いながら起きあがったアスランを、キラが下から睨む。



「からかったの?」

「そうだね、半分は」

「半分?」

「キラがそのつもりで言ったんじゃないのはわかってたからね。

 でも、好きな女の子にああ言われて、その気にならないはずもないだろ?

 だから、半分は、本気。

 それでも・・・一緒のベットに寝られる?」

「・・・寝たい。ダメ・・・?」

「わかった。キラの望むとおりに。

 ちょっと待っていて」



キラはシャワー室に向かうアスランを見送る。

ベットの端に寄り、目を閉じた。



父さん、母さん・・・



生前の二人を思い出し、心の中で呟く。

ヤマト家の両親が生みの親では無いと知って以来、初めてだった。

どうしても、「父さん」「母さん」と呼べなかったのだ。

だが、今は違う。



ごめんなさい。

アスランに言われるまで気づかないなんて、ごめんなさい。

あんなに愛されていたのに。

ちゃんとわかってたのに。



穏やかに二人を思い浮かべることができる。

今までは、辛かった。

思い出す度に、自分がひとりであると考えてしまう。



私は、ひとりじゃなかった。

そんなふうに考えるのが間違っていた。

そして・・・



「今は、アスランもいる・・・」



***



「キラ、眠ったのかい?」



アスランが優しく声を掛けるが、キラからは寝息が聞こえるばかりだ。

キラの顔に掛かっている髪をそっと掻き上げる。



笑ってる?

よかった、眠りに入れたんだな。

だが、・・・さて、どうするか。



キラが眠れたのは良かったが、アスラン自身がどうするか迷ってしまった。

目覚めたときのことを考えるなら、予定通りに横に寝るべきだろう。

しかし、・・・それでは、アスランは眠れるわけがない。



3年間、ずっとひとりだったと・・・

オーブは中立国だとはいえ、コーディネイターはそうはいなかったろう。

おそらく、そのほとんどがナチュラルの中で。

ヘリオポリスで、ずっと寂しさに耐えていたんだな。



「今日だけ、特別だよ」



アスランはシーツを捲り、ベットに入った。

起こさないように、そっとキラを腕に抱える。



「アス、ラ、ン?」

「ああ。おやすみ、キラ」



薄目を開けたキラにアスランが微笑むと、安心したようにすぐに目を閉じた。

キラの髪にキスを贈り、アスランも楽な体勢をとる。



「ゆっくり、おやすみ。

 これからは、俺がずっと傍にいる。

 キラを守るよ」



眠れないのはわかっている。

だが、せめて体を休ませようと、アスランは目を閉じた。



*** next

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