独り−17


キラは女の子


「・・・安心したよ」

「え・・・?」



思わぬ返事に、キラはアスランと目を合わせる。

アスランは、ちょっと困ったような顔をしていた。



「どう思ったか、と問われればね。

 正直なところ、安心したんだ。

 キラが俺に見せたくなさそうだったろう?」

「だって・・・」

「キラが、あれを見て辛かったんだというのはわかる。

 でも、俺からすれば、キラの生まれなんてどうでもいいからね」

「どうでも、・・・いい?」

「そうだよ。キラはキラだろう。

 キラ自身が知ろうが知るまいが、過去を含めて現在のキラなんだ」



気持ちを込めるように、アスランはキラの手を握った己の手に力を込める。



「両親に愛され、守られて育った、キラ・ヤマト。

 俺と幼なじみの、キラ・ヤマト。

 何を悩む必要があるんだ」



キラの目が潤み、やがて涙が零れ出した。



「いい、の、かな?

 私、は、キラ・ヤマトの、まま、で?」

「おじさんもおばさんも、キラがそんなことを言ったら、悲しむ」

「・・・そう?」

「当然だろう。

 血縁の有無に関わらず、キラとご両親は、本当の親子で家族だよ。

 ふたりとも、キラを愛していただろう?」

「ええ。ええ、そうよ。

 そして、私も愛していたわ・・・」

「なら、それこそが真実だ。

 事実と真実は違う。間違っちゃいけないよ」

「それで、いいのかな?」

「俺は、いいと思っているよ。

 それじゃ、駄目かい?」



涙は止まらないが、キラは微笑む。



「・・・嬉しい。

 ずっとひとりだと思っていたの。

 父さん、母さんが死んでしまって。

 ・・・アスランもいなくて。

 ディスクを見て、私は最初からひとりだったんだ、って。

 そう、思ったの。

 ううん、そう思いこんじゃったのね。

 バカね、私。

 アスランに教えてもらわなくちゃわからなかったなんて」



ちょっと息を吐き、キラは続けて言った。



「オーブで、私の双子の姉だという人と会ったの。

 私の後見人になった人の娘だったわ。

 彼女は私のことを知らないの。

 ただ、両親を亡くした私を元気づけてくれた。

 不思議と気があって、彼女と過ごすのは楽しかった。

 でも、そんな自分が嫌だったの。

 彼女に血のつながりを感じているようで」

「それでヘリオポリスに?」

「そう。オーブでなければ、どこでもよかったの。

 それに、工業カレッジへの入学も決まっていたから」

「そうか・・・」



アスランは手を伸ばして、指でキラの目元を拭う。



「さぁ、一番気になる話は終わったね。

 後は、またにしよう。

 今度は、眠るんだよ」

「アスラン、ずっとここにいてくれるの?」

「ああ。こうして手を握っていれば、安心できるだろう」



キラは頷こうとして、はっと気づいた。



「でも、それじゃ、アスランが眠れないわ」

「俺は平気だよ」

「ダメよ。アスラン疲れているはずよ」

「・・・キラ。キラが眠らなくちゃ、俺だって眠れない。

 たとえベットに寝たところで、キラが気になって眠れないよ」

「あ、じゃあ・・・」



いいこと思いついた、というように笑顔になったキラが起きあがる。



「一緒に寝ましょうよ。

 ね。昔みたいに。

 ちょっと狭いけど、無理なことはないと思うの。

 そうすれば、二人とも眠れるわ、きっと」



ニコニコと、無邪気に笑うキラ。

楽しかった昔を思い出しているのだろう。

だが、それを聞いたアスランは唖然としてしまった。



・・・わかってない。

昔とは違うんだぞ、キラ。

もう、子供じゃないんだ。



「キラ、それは俺を誘っているの?」



キラの顎を指で軽く押し上げ、アスランは顔を寄せる。

唇を奪い、そのまま押し倒した。

両腕を立て、キラを見下ろす。



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