独り−16


キラは女の子


「おまえが・・・乗ってきたんじゃないのか?」

「ん、乗せてもらってきたんだ」



やっと笑いを収めたラスティは、その余韻を残しながらも疑問に答えてやった。



「俺、撃たれたせいで動けなくなったんだ。

 で、銃撃が止んだからアスランを呼んだけど。

 そのアスランに手を引かれて来たんだよ。

 あの子、キラ・ヤマトって女の子が」

「其処って、モルゲンレーテの中だったんだよな?」

「キラさん、モルゲンレーテの人なんですか?」



ディアッカとニコルに言われて、ラスティは意外そうな顔をする。

ラスティは、その可能性を考えてみなかったらしい。



「・・・いや?違うんじゃないか?

 私服だったし・・・

 ああ、そうだ。

 モビルスーツは初めてだって言ってたから」

「モビルスーツに関わっていないだけかもしれないですよ?」

「いや、そう言われるとなぁ」

あの時、そこまで頭まわらなかったから・・・



それまで黙って疑わしそうにラスティを見ていたイザークが口を開く。



「初めてで、モビルスーツに乗れるか?」

「そうですよ。

 それに、あのOSめちゃくちゃでした」

「あ、それはキラも言ってたよ。

 これじゃ駄目だから書き換える、ってね」

「書き換える?」

「ああ。すぐできるようなことを言って。

 ほんとにすぐできたけど」



それを聞いて、3人は考え込んでしまった。

自分たちもOSの書き換えをしたからわかる。

あれは、そんな簡単なものじゃない。



と、そこへ新たな入室者が現れた。



「君達、見舞いは結構だが、怪我人を疲れさせないでくれよ」



軍医の言葉に、振り返り、ラスティの顔色がよくないことにやっと気づいた。



「あ、すみません。

 ラスティ、また来ますから」

「ああ、待ってるよ。

 それと、あの子のことでわかってることだけどさ。

 本人曰く、プログラミングが得意。実際、かなり優秀だと思うよ。

 アスランとの関係は、幼なじみで恋人未満ってことくらいだ。

 三年ぶりに再会したらしい」



***



「アスラン?」



アスランがそっと部屋に入ると、ベットの上から声がかかる。



「キラ、眠らなかったのか?」

「うん・・・」



キラがベットの上に上体を起こした。

服がかなり大きなせいで、よけいに華奢に見える。

頼りなげな表情と相まって、アスランはキラを抱きしめたくなった。

だが、その衝動に耐え、強いて笑顔を浮かべる。



「どうしたの?」

「・・・さっきはね、眠れると思ったの。

 もうひとりじゃない、って。

 でもね・・・。

 ここがね、アスランの部屋なのはわかってるの。

 だけど、目を閉じると、これは夢なんじゃないか、って。

 目覚めたとき、そこにアスランはいないんじゃないか、って。

 今日のことは、すべて現実では無かったんじゃないかと」

「そう・・・」



アスランはキラの横に座り、シーツを握りしめたキラの手をとり、両手で包み込む。



「ごめんね。キラをひとりにするべきじゃなかった」

「そんなこと・・・っ!」



悔やむように顔をしかめるアスランに、キラは慌てて首を振った。



「落ち着いて、キラ。

 さぁ、俺はここにいるよ。

 こうして、手を握っていてあげる。

 安心して眠るんだよ」



話ながらアスランは片手でキラが横になるように導く。



「アスラン・・・、ディスクは見た?」

「キラ、眠るんだ」



起きあがろうとするキラの肩を、アスランは軽く押さえた。

アスランを見上げるキラの目は、揺れている。



「見たの?」

「・・・見たよ」

「・・・どう、思った?」



答えを聞きたくて、聞きたくなくて、キラは目を閉じて訊いた。



*** next

Top
Novel


Counter