独り−15


キラは女の子


「ラスティ。大丈夫ですか?」



医務室に入り、ニコルは仕切りの向こう側に小さく声をかけた。



「ああ、ニコル。入ってこいよ」



ラスティは、ベットに横になっている。

治療は終えたが、出血の影響で体力が無くて起きあがっていられない。



「あれ?イザークとディアッカも来たのか」



退屈していたラスティは、3人の来客に笑顔を向けた。



「怪我をしたそうですね」

「ああ、とんだ失態だよ、ほんと。

 そういや、他の奴らは無事かい?」

「ミゲルの隊にも負傷者が出ましたよ。

 そちらはガモフに収容されてます」

「あっちは軽傷だったがな」



自分だけだと知り、ラスティは顔をしかめる。



「ちぇっ。俺だけ失敗したのかよ・・・」

「ミゲルも失敗したぜ。

 あの戦艦に逃げられた」



ディアッカの言葉で、ラスティもコロニー内部での光景を思い出した。



「そういや・・・。

 あれだけの爆薬で無事なんて、よっぽと頑丈なんだな。

 あれ?でもさぁ・・・

 どうして逃げられたの?」



あの時、コロニーの外にはこのヴェサリウスとガモフが待機していた。



「コロニーから出れば、艦でわかるはずだよな」

まぁ、どうやって出たのかも不思議だけどさぁ。



まさか、ラスティが知らないとは思わなかった3人は顔を見合わせる。

イザークが口を開いた。



「気づかなかったのか?」

「何を?」

「ヘリオポリスがどうなったかを、だ」

「へ?どうなった、って、どうなったんだ?」

「ヘリオポリスは・・・」



さすがに、事実とはいえ、イザークも言いづらい。



「・・・崩壊した」

「・・・崩壊?」



耳を疑い、問い返すラスティから、イザークは目を逸らしてしまった。



「ディアッカ?ニコル?どういうことだ?」



ラスティの視線に、ディアッカも横を向く。

ニコルも避けようとしたが、思い直す。



事実は、事実ですしね・・・



「あの、地球軍の戦艦による攻撃で・・・。

 コロニーを支えるシャフトが切れたそうです」



本当に、あそこが崩壊したのか・・・



「あの子の家を、奪っちまったのかよ」



悔しそうに言うラスティに、ニコルもここに来た理由を思い出した。



「あの子って、キラさんのことですか?」

「ああ。おまえらも会ったか?」

「少しだけですけどね。

 それで・・・」



キラの話題になった途端、イザークとディアッカもラスティに向き直る。

その様子に、ラスティにも、彼らがキラのことを聞きたくて来たのだとわかった。



「俺だって、あの子のことはよく知らないよ。

 アスランに聞いた方がいいと思うけど?」

「そのアスランが駄目なんです。

 話をする隙がありません」



ラスティはちょっと首を傾げたが、すぐに思い至ったらしい。

ゲラゲラと笑い出した。



「あ、ああ、なるほどねぇ。

 キラに夢中で、他に気が向かないんだ。

 あのアスランが、まさか任務より女の子を優先するとは思わなかったよ、俺も」



くっくっ、と笑いながら体を捻ってしまい、イテッと呻いたりしている。



「そんなに、大笑いするほどのことでもないんじゃないですか?」



あの変わり様にはびっくりしたが、尊敬しているアスランを笑われて、ニコルが憮然とした。



「い、いや、だってさぁ。

 あん時、アスランは俺のために、って感じで話してたんだよ。

 でもどう見ても、どう聞いても」

下心が見えたんだよなぁ・・・。



「下心、だなんて、そんな言い方は・・・」

「だってさ、普通考えないだろ?

 素人の女の子にモビルスーツ操縦させるなんて」

「「「・・・はぁ?」」」



聞いていた3人は、揃って眉根を寄せた。



*** next

アスキラなのにどっちも出てないですね・・・
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