独り−14


キラは女の子


「キラ・ヤマト・・・、なぜ・・・」



アスランとキラを見送ったまま、クルーゼが呟いた。



「隊長は、キラさんをご存じだったんですか?」



クルーゼの声が聞こえたイザーク、ディアッカ、ニコルは目を見合わせた後、ニコルが代表して訊いた。



「いや・・・、彼女とは今までに面識は無い。

 ただ、もしかしたら私と縁があるかもしれないな」



気を取り直すように、クルーゼは部下達に向き直った。



「さて、アスランはしばらく戻らないだろう。

 君達の話を聞こうか」



クルーゼの言葉に、イザークが一歩前に出て報告をした。



***



「ふむ。ご苦労だった。

 アスラン達のと合わせて5体のモビルスーツ。

 かなりの性能を持っているようだな。

 あの戦艦が破壊出来なかったのは残念だが・・・」

「やはり、コロニーの崩壊で・・・?」

「ああ、ロストしてしまったよ」



肩をすくめて見せたクルーゼは、あまり残念そうには見えなかった。



「しばらくこの宙域で探索を行うことにする」

「よろしいのですか?」

「なに、丁度いい。

 あれらのモビルスーツの改良や調整をする時間が出来る。

 パイロットの一人であるラスティも、快復までには少しかかりそうだからな」



ラスティの話題に、詳細を訊こうとニコルが口を開こうとした時、アスランが戻ってきた。



***



「キラ・ヤマトはどうしたね?」

「私の部屋で休ませました。

 彼女をしばらくこの艦に乗せていていただけませんか?」

「民間人の彼女をかね?

 かまわんが・・・」



現在この艦は、あの地球軍の戦艦を追っている。

寄港予定は当分無いので、どちらにせよ、降ろしてやることはできない。



クルーゼは口元に笑みを浮かべる。



「同室、とはいただけないな」

「そ、それは・・・」



からかいを含む問いかけに、アスランが珍しく慌てている。



「まぁ、いい。

 あんなことの後では、動揺が激しいだろう。

 しばらくは、目を瞑っておく」

「ありがとうございます」

「隊長」



それまで黙って二人の話を聞いていたニコルが口を挟んだ。



「それで、キラさんはどのような扱いになるのですか?」

「さて・・・、避難民を保護した、というところかな。

 アスラン、彼女はオーブ国籍か?」

「はい。そのはずです」

「では、本国を通じて、オーブに照会しなければな。

 明日、話が出きるようなら連れてきたまえ」



***



退出すると、アスランはさっさと1人で行ってしまった。



「・・・素早いな」

「ほんと、ほんと。

 昨日までと、別人だよな」

俺達に説明しようって気は無いのかよ・・・



「それだけ、彼女が心配なんですよ」

「心配ねぇ・・・。

 そもそも、なんであの子、ここに来たの?」

「隊長は、彼女がラスティを助けたって言ってましたよね」

「あれ、イザーク、何処行くんだ?」



3人にはこの艦にも部屋が用意されている。

そこに向かっているはずなのに、イザークだけが途中で曲がったのだ。



「医務室だ」

「あっ!ラスティか!」

「・・・意外です。イザークが自発的に見舞いに行くなんて」

思ったより、仲間思いなんですね・・・



ニコルにしみじみと言われ、ちょっと顔を赤らめながら振り返る。



「違う!」

「・・・ラスティを嫌いなんですか?」

「そうじゃない!

 ラスティと話をしに行くんだ!」

「ああ、キラさんのことを訊くんですね。

 それは良い考えです」

「だな。助けたってくらいだから、直接会ってるだろうしな」



ニコルとディアッカも、イザークについていった。



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