独り−13


キラは女の子


「落ち着いた?」

「うん。・・・ごめんなさい。

 隊長さんの話の途中だったのに」



艦橋を出たアスランは、キラを連れて自室に戻っていた。

キラが泣きやむのを待って、抱きしめていた腕を解き、キラの顔をのぞき込む。



「そんなことは、気にしなくていいんだよ。

 話なんか、いつだって出来る。

 今、一番大切なのは、キラが笑顔になることだよ」

「え?」

「キラ、やっと再会できたんだから。

 泣き顔より、キラの笑顔が見ていたいな」

泣いているキラも可愛いけどね?



アスランは片手を伸ばし、キラの頬に当てる。



「どうしたら、昔みたいに笑ってくれる?」



キラはアスランの手に、自分の手を重ね、目を閉じた。

頬に触れる手のひらから伝わるぬくもりが心地よい。



もう、私にはアスランしか大切な人がいない。

アスランに会うことだけを望んでいたんだもの。

アスランに嫌われたくない。

あのことを知っても、変わらないでいてくれる?

信じて、いい?



キラは閉じていた目を開き、アスランを見る。



「ずっと、誰にも話せなかったことがあるの。

 ひとりになって、初めて知った、私自身に関する事。

 この・・・」



キラは両親から残されたディスクをアスランに渡した。



「その中に入っているの」

「見ても、いいのかい?」



キラは少しだけためらったが、小さく頷いた。



キラの顔色が悪い・・・

悩みを早く解消させたいが、少し休ませた方がいいな。



「キラ、これは後で見させてもらうよ」

「でも・・・」

「キラには休息が必要だと思う。

 ここは、俺とラスティの部屋なんだ。

 後でキラの部屋は用意するけど。

 今はここで、眠ってくれ」



アスランはキラの返事を待たず、ロッカーから自分の服を取り出す。



「とりあえずこれに着替えて。

 そのままじゃ、寝心地悪いからね」



有無を言わさずキラに服を手渡した。



「えっと・・・」

「いいかい、何も考えずに眠るんだよ。

 大丈夫、今のキラはひとりじゃない。

 ここは俺のベットで、君が着るのは俺の服。

 いい夢が見られるよ」



ニッと笑うアスランに、キラもクスッと笑う。



「そう、ね。

 アスランがいるのよね。

 ちょっとそっち向いていてね」



アスランが貸してくれたのはアンダーシャツのようだった。

もちろん、キラには大きい。



「ブカブカね。これなら寝間着にちょうどいいわ」



ベットに横になったキラの枕元に、アスランはかがみ込んだ。



「おやすみ。いい夢を」



キラの額に、アスランのキスが落ちる。



「おやすみなさい」



キラはアスランに、はにかむような笑顔を向けた。



***



部屋を出たアスランは笑みを消した。



「この中に、キラを苦しめているものがある・・・」



アスランは手の中のディスクを壊してしまいたかった。

アスランにとって、キラはキラでしかない。

キラにどんな秘密があろうと、どうでも良かった。

だが、キラを苦しみから開放するには、アスランもそれを知らなければならない。



キラは、本当なら俺に知られたくなかったんだ。



いや、後にしよう。

キラが眠っている間に済ませなければならないことがある。



隊長に任務の報告を行わなければならない。

そして、キラがこの艦に滞在する許可を得なければ。



アスランは艦橋へ向かった。



*** next

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