独り−12


キラは女の子


最初のディスクには、キラの両親からのメッセージが入っていた。



「キラ。私達は、おまえがこれを見ないで済むことを望んでいる」



モニターに、キラの記憶よりずっと若い両親が写し出されている。



「ずっと、秘密にしていたことがある。

 決して、おまえにも誰にも告げるつもりの無いことだ。

 私達が生きてあるならば、絶対に秘密は守り通す。

 だが、もう私達がおまえを守ることが出来ないならば。

 心無い他者から、知らされることもあるかもしれない・・・」

「事実をねじ曲げられるよりは、と思うの」



もう一つのディスクには、キラに見せたくないものが入っているらしい。

けれど、それはキラの知らない、だが事実なのだという。



「キラ、私達の大切な娘」

「私達はあなたを愛しています。

 どうか、それを忘れないで・・・」



そう締め括られてメッセージが終わった。



ディスクを手に、キラは逡巡するが、見ないではいられない。

たとえキラに見せたくないと思っていたにせよ、これはキラに残されたもの。

キラの両親が、キラに残してくれたものなのだ。



しかし・・・



そこには、キラの知りたくなかったことばかりが納められていたのだ。



***



「どうかしたかね?」



クルーゼは、キラがまるで聞いていないことに気づき、話すのを止める。



「キラ!?」



キラは血の気が引いた顔で、クルーゼを凝視していた。

アスランの呼びかけにも反応しない。

キラは唇を震わせながら言葉を紡いだ。



「ラウ・・・クル・・・ゼ・・・」



嘘・・・、なんで・・・。

な、名前が、一致しただけよ。

あの記録が本当なはず、ないもの。



「アル・・・フラガ・・・の・・・」



確かめるように小さく呟いたキラは、クルーゼが微かに肩を揺らすのを見た。



知っている・・・。

あれが本当なのか、彼が本人なのかはわからない。

でも、知っているんだわ!



「キラ、キラ、どうしたんだ!?」



アスランがキラの腕の掴み、軽く揺さぶる。

だが、キラはクルーゼから視線を外せなかった。



「君は、私を知っているようだな・・・」

「いいえ!」



穏やかに問いかけるクルーゼに対し、キラは不自然なほど強く否定してしまう。



「そんなはず、無いんです・・・。

 あなたが実在するなら、私は・・・?」

「キラ・・・」



自問するように呟きながら、キラは目に涙を浮かべ始めていた。

キラを慰めようにも、アスランにはキラがなぜ泣き出したのかわからない。

そんな二人の様子に、クルーゼも嘆息した。



「アスラン・ザラ。彼女を部屋に案内してやりたまえ。

 彼女には休息が必要なようだ。

 話は、落ち着いてからにしよう」

「はっ!」



願ってもない命令に、アスランは呆然と立ちつくすキラの肩を抱いて素早く退出した。



***



「キラ、キラ、何が悲しいんだ?」



何度目かの呼びかけに、やっとキラがアスランを見る。



「アスラン・・・」

「キラ、そんなに泣かないでくれ。

 そんなふうに泣かれると、辛いよ。

 言いたいことがあるなら、吐き出してしまうんだ」



言いたいこと?

そんなこと、無いわ・・・。

あるのは、言いたくないことだけ。



俯いてしまったキラの頭を抱き寄せて、アスランは背中をポンポンと叩く。



「キラ、キラが何を考えているのか、わからないんだ。

 昔みたいに、俺はキラの全てを知っているわけじゃない。

 でも、キラが何を言っても、何をしようと。

 俺がキラを好きな気持ちは、変わらないんだ。

 俺は、いつだってキラの味方のつもりだよ。

 キラは、違う?」

「ア、ス、ラン・・・」



*** next

あくまで、TV本編にこだわってますが
クルーゼの性格は壊れていないはず・・・
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