独り−11


キラは女の子


「どう、思います?」

「ちょっとびっくり、ってね」



ニコルとディアッカは、今までと違うアスランの様子を見ながら、小声で話していた。



「いつもの無表情はどこへ置いてきたんだかねぇ」

「そりゃ、人間ですから。笑いもしますよね」

「笑ったの見たのは初めてだな」

「そうですね。ええ、僕もあんな笑顔は見たこと無いです。

 イザークはありますか?」

「・・・」



イザークはむっつりと押し黙ったままだ。



「・・・。

 キラさんって、すっごく綺麗ですね」

「ああ。あれは絶対コーディネイターだよな」

「・・・綺麗というより・・・可愛いという気がする」



ぼそっと呟くイザークに、驚いた二人は目を見張る。



「・・・ああいうのが、イザークの好みか・・・」

「止めた方がいいですよ。

 どう見ても、アスランの恋人ですよ、あの人」

「ち、違う!一般論だ!」

「「あやしい・・・」」



焦って否定するイザークに、ニコルとディアッカは疑いの目を向けた。

だが、イザークは図星を指されて慌てたわけではない。

先の言葉を発した瞬間、振り向いたアスランと目があったのだ。



こんな誤解で敵視されては迷惑だ・・・っ!



ニコル達が気づかないくらい一瞬のことだったが、睨む目に、恐怖を感じた。



く・・・っ、この俺が気圧されるなど・・・っ!



***



後ろで交わされる小声の会話の内容は、ほとんど聞こえない。

まぁ、聞こえなくともわかるが・・・。

キラについてと、俺の態度のことだろうな。



と、なぜかイザークの一言だけがアスランの耳に届いた。



アスランは反射的にイザークを睨んでしまった。

だが、すぐに我に返って表情を戻す。



「どうしたの、アスラン?」



睨むところは見られなかったようだが、アスランの感情の変化にキラが気づく。



「なんでもないよ。ラスティのことを思い出しただけ」

「そうね。ラスティ、どのくらいで回復できるのかしらね」



***



キラがアスランに連れられて艦橋に入ると、そこでは、顔を仮面で隠した人物が待っていた。



「ようこそ、キラ・ヤマト嬢。

 私は、ラウ・ル・クルーゼ。隊長を務めている。

 君のおかげで、ラスティを助けることが・・・」



キラは、途中から聞いてはいなかった。

その名前に聞き覚えがあったのだ。



ラウ・ル・クルーゼ。



それは、キラが忘れようとしていたことを思い出させた・・・



***



両親を失い、キラはオーブ本国へ降りた。



地球にはヤマト家の家がある。

キラはここで暮らした記憶は残っていなかった。

しかし、両親の持ち物は残っている。



「父さん、母さん、私どうすればいいのかな?」



月の家は既に処分されている。



「戦火を避けるだけなら、ここでも良かったのに」



***



「キラ・ヤマトさんですね。

 私は、ある方の代理として参りました」



そう言ってヤマト家を訪れた見知らぬ女性は、二つのディスクを差し出した。



「これは、貴女のご両親からお預かりしていたものです。

 お二人に万一のことがあった場合にと」

「父と母からの・・・」



ディスクをキラに手渡した後、彼女はバックからカードを取り出す。



「そのディスクをご覧になった後、ご自身の身の振り方をお決め下さい。

 ここに住むにも、ヘリオポリスに行くにも、保護者が必要です。

 私をここへ遣わした方が、貴女の後見をなさいます」

「その人は、私の両親とはどのような関係なんですか?」



「いずれ、わかるでしょう・・・」



*** next

この女の人、誰なんでしょう・・・
なんて深読みしないでくださいね
ただのメッセンジャーです
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