独り−10


キラは女の子


「アスランと別れてから、ほんの2〜3ヶ月後だったの。

 父さんと母さんが、テロに巻き込まれたのは」



***



「母さん、私達はいつプラントに行くの?」

早く、アスランに会いたいな・・・。



寂しげに訊くキラに、母カリダは顔を曇らせた。



隣家のアスランが母親レノアと共に、プラントに引っ越して一ヶ月ほどが過ぎている。

最初の頃は、アスランからキラに、毎日のように通信が届いていた。

だが、途中から減り、ここ一週間は全く連絡が無い。

地球とプラントの緊張が日々高まっており、一般人による通信は繋がりにくくなっていた。



キラのクラスメートも、だんだん減ってきている。

アスラン以外のキラの友人達も皆、既に本国へ移住して行った。



「キラ、私達はプラントへは行かないの」

「え・・・?」



思いがけない返事に、キラは目を瞬く。



「私達はね、オーブのコロニーの一つに行くの。

 キラだけでも、プラントに行かせてあげられればいいんだけど。

 ごめんね。キラ、アスラン君とはしばらく会えなくなるわ」

「プラントに、行くんじゃなかったの?」

「・・・行けないの、ごめんね」



キラは母の顔を見ながら、やっと思い出した。

父さんも母さんもナチュラルで、プラントはコーディネイターの国。



「・・・わたしこそ、ごめんなさい。

 全然、考えなかったの。父さんと母さんのこと」

「いいのよ、キラ。

 それはキラが、ナチュラルにもコーディネイターにもこだわりを持っていない証拠。

 キラが良い子な証拠でもの。母さんは嬉しいわ」



カリダは微笑みを浮かべ、キラの頭を撫でた。



***



一ヶ月後、ヤマト家はヘリオポリスへの移住が決まった。



***



『青き清浄なる世界のために!』



知識として知ってはいたその言葉を、キラはこの時初めて聞くことになる。



キラは両親と共に、コロニー・ヘリオポリスへのシャトルを待っていた。

だがほんの一時、キラは両親と離れたのだ。

振り返ったキラが見たのは、人々が凶弾に倒れていく光景だった。



呆然と立ちつくしていまったキラを、たまたま近くにいた人が引き倒してくれなければ、キラも同じ運命を辿っただろう。



やがて銃を乱射する音が途絶え、バタバタと人が駆けていくのがわかる。

犯人達が引き上げたのだ。



キラは、押さえつけていた手が離れると、恐る恐る起きあがった。



「父さん・・・、母さん・・・」



***



「アスラン。隊長が待っています」

「ああ、すまない。先に行ってくれないか」



遠慮がちな声に、アスランが応じた。

ニコル達が着替え終えて出てきたのだ。



キラは慌ててアスランから離れ、涙を拭う。



「だ、大丈夫よ。アスラン、隊長さんに呼ばれてるんでしょ?」

「キラが気にすることじゃない」



だが、キラは首を振る。

アスランは、キラが離れたことで宙に浮いた手をそのまま伸ばした。



「キラ、一緒に艦橋へ行って欲しいんだ。

 さっき、隊長から指示があった。

 本当は、休ませてあげたいたんだけど、ごめん」

「ううん、アスランといられる方がいいわ」



涙の跡を残しながらも、にこっと笑って、キラはアスランの手をとった。



***



さっきは、怖かったのに。

今もイザークって人は不機嫌そうなのに。

ここが軍艦の中であることも変わらないのに。



キラは、キラの手を引いてくれているアスランの横顔を見上げる。



アスランといると、全然、気にならない。



キラの視線に気づいたのか、アスランがキラを振り向く。



「どうした?」

「なんでもないの」



微笑みを浮かべているキラに、アスランも笑顔を返した。



*** next

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