独り−9


キラは女の子


「キラ!」



着替えを済ませ、戻ったアスランが見たキラは、イザーク達に囲まれていた。

キラのすぐ前に割り込み、キラを庇うように立つ。

無言で同僚達に入室を即し、彼らもキラが動揺しているのを見て取り、パイロット控え室に入った。

彼らとて、早く着替えて隊長のもとへ行かねばならない。



「今、何て・・・?」

ヘリオポリスが・・・



キラは目を見開いたまま呟いてから、やっと、目の前にアスラン背を向けているのがアスランだと気づく。

呆然としていて、アスランがキラの名を呼ぶ声も聞いていなかったのだ。



「アス、ラン・・・、この人たちが、変なこと、言うの。

 コロニーが、ヘリオポリスが、もう無いなんて・・・。

 そんなはず・・・

 ・・・アスラン?なんで違うって言ってくれないの?」



アスランはキラの呼びかけで振り返るが、口を開こうとはしない。

その無言の答えを、キラは信じたくなかった。



「だ、だって、さっきまで、いたのよ、私。

 アスランだって、いたでしょ?

 そんな・・・」



だが、いくら待っても否定しないままキラを見つめるアスランに、キラも受け入れないわけにはいかない。



「・・・また、無くなっちゃった・・・」



瞳を陰らせ、ぽつり、と呟くキラ。

アスランはそんなキラに、また、疑問を抱く。



泣く、と思った。

なのに、泣かないで、諦めて受け入れる?キラが?

それに・・・、「また」だと?

やはり、何かが、あったんだな。



「キラ・・・」



悲しいというより、寂しいという風情のキラの頭をそっと撫でる。



「みんな、避難できたかしら?」

「ああ。救命艇がパージされていた。

 警報からの時間はあったから、大丈夫だよ」

「うん、そうね」



元気づけるようにアスランが笑いかけると、キラもちょっと笑顔になった。



「おじさんやおばさんも、きっと。

 地球のオーブ本国に連絡をとればわかるよ」

「・・・それは、いいの。

 父さんも母さんも、・・・いないの」



だが、アスランのこの言葉で、キラは笑みを消し、俯いてしまう。

不思議に思いながらも、アスランは続けて言った。



「ヘリオポリスにいなかったのかい?

 でも、キラがここにいることは伝えないとね。

 キラのことを心配しているだろうから」

「いないの、もうどこにも。三年前から」



え?



「いない、って、・・・まさか!?」



一瞬キラの返答に戸惑ったアスランだが、すぐに思い至る。



キラの両親が亡くなった・・・。

おじさんにも、おばさんにも、親しくしている親戚の話なんか聞いたことなかった。

じゃあもしかして、キラはこの三年間、ずっとひとりきりだったのか?



プラントに移住したアスランは、ほどなく月のキラと連絡がとれなくなった。

それでも、キラは両親に守られて暮らしていると疑うことはなかったのに。

アスランは過去が悔やまれてならなかった。

なんとしてでも、キラと連絡をとるんだった・・・っ!



「・・・何が、あったんだ?」

「・・・」

 

俯いたキラの目元から、水滴が漂いだしたのを見て、アスランはキラの頭を自分の胸に抱き寄せた。



「言いたくないことなら、言わなくていいよ」



アスランはキラの耳元に、優しく囁いた。



「ち、違う、の。・・・思い出した、だけ。

 父さん達が、死んだ時の、こと」

「そう」

「へ、変、ね。あの時、いっぱい泣いた、のに。

 なん、で、・・・三年も、経って、今更、こんな・・・」

涙腺、緩くなってるわ・・・



今まで、こうして思い出して泣くことは無かったのか?

なんにしても・・・



キラが辛かった時、俺が傍にいてやれなかったなんて・・・っ!



*** next

キラのパパとママ、ごめんなさい
死んだことにしてしまいました・・・
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