独り−8


キラは女の子


アスラン、早く出てきて・・・。

ううん、大丈夫よ、アスランはこの扉の向こうにいる。

消えたり、しないわ。

大丈夫、私はひとりじゃない。

アスランがいるんだから・・・



アスランを待つ間、キラは自分に言い聞かせる。

そうしていないと、自分の中の不安が耐え難くなりそうだった。



もう、平気だって思ったのに。



と、シュンッと音がしてキラの背後の扉、キラ自身も入ってきた扉が開く。

びくっとしたキラが振り向くと、扉の外に、見知らぬ少年達が立っていた。



***



「どうせこっちに来るなら、ガモフ行く必要なかったよなぁ」



イザーク、ディアッカ、ニコルの3人は、それぞれ地球軍のモビルスーツを奪取し、ガモフに帰艦した。

しかし、その直後に隊長のクルーゼから、ヴェサリウスに来るよう命じられたのだ。



「仕方ないですよ、なにかあったんでしょう。

 隊長が予定を狂わすなんて、滅多にあることじゃないです。

 それに、ラスティが負傷したって聞きましたよ。

 そのせいでしょうか?」

「ラスティが?あいつが負傷、ねぇ・・・。

 だって、アスランとラスティで二機持ってきたんだろ?」

なら、たいした怪我じゃないんじゃないか?



「イザーク、おまえはどう思うわけ?」

「行けばわかることだ。

 隊長の命令なんだ。考えたってどうしようもないな」

「いや、まあ、そうなんだけどよ」

「ええ、そのとおりなんですけど」



ディアッカとニコルはイザークに正論を言われ、顔を見合わせる。



「まぁ、そうですね。

 気になるなら、急ぎましょうか」



隊長のいる艦橋に行く前に、パイロットスーツから軍服に着替える必要がある。

3人はパイロット控え室に向かった。



いや、向かおうとしたが、格納庫から通路に入ったところで止まる。

通路の人影に驚いた。



華奢な肢体に、私服の、美少女。

こちらを振り返った彼女も驚いた様子で彼らを見ている。



「誰だ?見慣れない顔だな」



イザークの詰問に、少女は体をピクッと揺らす。



「あ、あの・・・っ」

「なぜここにいる?」



***



少年達の格好がアスランやラスティと同じことで、彼らがアスランの仲間なことはキラにもわかった。

いや、ここはザフト軍の艦なのだから、キラ以外は皆ザフト兵に決まっているのだが。



銀の髪の目つきの鋭い少年が発する声の勢いに体が強ばる。

ちゃんと答えなくちゃ、と思うほどに焦り、声が出ない。



「ちょっと、イザーク!」



瞳が揺らしながら助けを求めるキラは、別の、緑の髪の少年と目が合った。

イザークというらしいその少年を止めてくれる。



「彼女、怯えてます。語調を控えてあげてください。

 そのままじゃ、答えられませんよ」

「そうそう。女の子には優しくしてやらなきゃなぁ」

「ちっ、それならおまえらが訊け」



イザークの視線が逸らされ、キラもちょっと息が吐けた。

そのキラの前に、今度は先ほどの緑の髪の優しそうな少年が立つ。



「驚かせてすみません。

 僕らはモビルスーツのパイロットです。

 僕がニコル・アマルフィ。

 それから、イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマン。

 あなたは、このヴェサリウスの乗員ですか?」



穏やかな笑顔を向けるニコルに、キラもやっと声が出せる。



「あ、えっと・・・、私は乗員じゃないんです。

 さっき、アスランとラスティと一緒に来ました」



まだ緊張しながらも、キラは続ける。



「名前は、キラ・ヤマトです。初めまして」

「初めまして、キラさん。

 キラさんは、ザフトの人間では無いのですか?」

「違います!と、あ、あの、あの・・・」



つい思いっきり嫌そうに否定してしまい、キラは慌てた。

が、ニコルはにっこりとキラに笑いかける。



「気にしないでください。軍が好きな人はあまりいませんよ。

 アスラン達と来たということは、ヘリオポリスから来たんですか?」

「そ、そうです。私、ヘリオポリスのカレッジの学生なんです」

「おまえ、コロニーの崩壊に巻き込まれたのか?」

「え?」



今、なんて・・・?



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