独り−5


キラは女の子


『キラ、急ぐぞ。』

「・・・でも・・・」



キラの瞳が揺れている・・・良くない兆候だ。

今、さっきのようになっても、俺の手は届かない。

早く、ここから遠ざけるべきだな。



『俺達がコロニーを出れば、あの艦もジン達もついてくるだろう。』



***



「な、んで?

 あれ、何?あの艦、何?」



唇を震わせながら、キラが訊く。



「これと一緒さ。地球軍の新兵器。

 ・・・ちっ。あれだけの爆薬でほとんど無傷かよ」

「地球軍?なんで地球軍のがここにあるの?

 ここは中立国のコロニーなのに・・・」



アスランとラスティに従って、キラはストライクをコロニーから脱出させた。

宇宙空間を指示されたポイントに向かいながら、やっとキラの緊張が解けてくる。

それとともに、ラスティと話をする余裕も戻ってきた。

もちろん、ショックは隠せないが。



「さぁなぁ・・・。ただそういう情報があったんだ。

 ヘリオポリスで地球軍が新型兵器を開発・製造しているってな。

 俺達ザフトにしてみりゃ、ほっとけない」

「・・・ザフト?あなた、ザフト軍なの?」

「へ・・・?君、アスランの知り合いなんだろ?」



アスランとキラが慕い合っているのはラスティの目にも明らかだった。

アスランとラスティは揃いというか、同じパイロットスーツ姿だ。

アスランがザフトなら、ラスティだってザフト。

誰が見たってわかる。



それで・・・知らないのだろうか?



「アスランも・・・ザフト軍に入っているの?」

嘘よ!アスラン、戦争を嫌っていたもの!



「・・・名前、教えてくれる?

 俺は、ラスティ・マッケンジー」



キラの様子がちょっと変に感じたので、ラスティは話を逸らすことにした。



「え?あ、ああ、ラスティさんですか。私はキラ・ヤマトといいます」



我に返ったように穏やかな様子に戻るキラ。

そのことに逆に心配になったラスティは、気楽な会話をすることにした。



「よろしく、キラさん。俺のことは、ラスティって呼び捨てしてくれよ」

「私も、キラでいいです」

「・・・そんなことしたら、アスランに怒られちゃいそうだな」



きょとん、とラスティに目を向けるキラに、ラスティは笑いかける。



「君はあいつの、アスランの恋人なんだろ?」

「ち、違いますっ。あ、あの、幼なじみで・・・っ」



キラは顔を真っ赤にして、両手をわたわたと動かして否定する。



う〜ん、可愛いなぁ。

アスランのじゃなきゃ、とっちゃうのになぁ。

恥ずかしそうに、慌てたように、両手を・・・



そう、両手を・・・



「ちょ、前、前見て。ちゃんと、レバーも握ってて!」



いくらほとんど何も無い宇宙でも、よそ見はいけない。

どこにどんな危険があるかわからないのだから。



「す、すみません。私ったら、慌てちゃって。

 でも、ラスティさん・・・ラスティもいけないんですよ。

 からかったでしょう?」

「からかってないって。ほんと、そう思ったんだよ。

 で、本当に違うの?」

「・・・私は、好きなんですけど。

 さっき三年ぶりに会ったばかりなんです」



そういやぁ、アスランには・・・

おい待て、ほんとにいいのか?

彼女、プラントに行ったらショックを受けるぞ。



と、突然モビルスーツが吹き飛ばされた。



「きゃぁぁぁぁぁっ!」

「な、んだ!?」



宇宙に風など無い。

何があったんだ!?



「キラ、大丈夫か?」

「・・・っ、だ、大丈夫です。

 ラ、ラスティの方が大丈夫じゃないです!」



キラの横に、ラスティが倒れ込んでしまっていた。

ラスティは薬で体に力が入らないので、支えることができない。

慌てて、キラはラスティに手を貸し、元の場所に戻す。

重力が無いのが、幸いだ。



「いったい、何んだったんだ、今の・・・」



*** next

アスキラなのにアスランが少なすぎる・・・
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