独り−3


キラは女の子


ラスティは、アスランの反対を退けようとする。

ラスティの指摘はもっともだ。

だが、今のラスティがモビルスーツをまともに動かせるわけが無い。

アスランはもちろん、ラスティ自身にもそんなことはわかっていた。



決断を、しなければならない。



「どうしても、てならさ。

 ・・・俺を置いて行け、アスラン」

「ラスティ!」

「他にどうしようもない。

 そんな顔をするなよ・・・。

 いつもの冷静なおまえに戻れ、アスラン。

 わかっているだろう?

 俺達は軍人だ。任務は遂行しなきゃいけない」



ラスティは微笑んだ。

そんなラスティと目を合わせ、アスランは口を開く。



「ラス・・・」

「待って、アスラン!」



キラは、二人の邪魔をしないように、静かにしていた。

けれど、こんな会話を聞いては黙っていられない。



「待って、この人は連れて行かなきゃダメよ!

 こんな大怪我してるのよ。

 すぐにでも治療を受けないと、命に関わるわ。

 ここにはコーディネイターが診れるお医者様は少ないの。

 まして、みんなもうシェルターに避難してしまっているわ」

このままじゃ、この人、死んでしまう・・・っ!



キラの言葉に、アスランの顔が辛そうに歪む。

アスランとて同じ気持ちなのだ。

ただ、軍人としての判断はそれを許さない。



「キラ、君の・・・」

「アスラン!お願いだから、仕方ないとか言わないで!

 選択肢がひとつしかないなんてこと、そうは無いの。

 私には、アスラン達の事情がわからないけど。

 でも・・・っ!」



アスランの腕をとらえたキラの指が、また震えている。



縋るようにアスランを見るキラの顔と、穏やかな目で二人を見つめるラスティの、しかし微かに痛みに歪んだ顔とを、アスランは見比べた。



もう、本当に迷っている時間は無かった。



方法は無いことも無い。

それに・・・キラを連れて行きたい。

今のキラなら、ラスティの為にも拒まないだろう。



アスランは少し屈んで、キラと目線を合わせる。



「キラ、協力してくれるかい?

 ラスティを、助けたい」

「もちろんよ!」



途端、キラに笑顔が浮かぶ。

反対に、ラスティは眉を寄せた。



「おい・・・」

「キラ、ここから離れることになるよ?」

「平気」



キラはまるで迷い無く、頷く。



「ラスティ、連れて帰るよ。薬を飲むんだ」



ラスティは、再び差し出された薬を前にちょっと考えたが、今度は素直に飲んだ。

どちらにしても、既に痛みが限界だったから。



「それで?いったいどうする?

 その彼女・・・キラさんって言ったか。

 彼女に何をさせるつもりだい?」

予想はつくけどなぁ。



「・・・キラに、モビルスーツの操縦をしてもらう」

「私、が?」



目を丸くするキラに、アスランは説明しながら、ラスティを抱き起こす。

即効性の薬なので、もう効いているようだ。



「キラ、この装備・・・ラスティの持ち物を持ってきてくれ。

 ラスティを、このモビルスーツのコックピットに乗せる」

「あ、ええ」



ラスティを抱え上げたアスランは、身軽に上に上がった。

いろいろ持ったキラもそれに続く。



アスランは、ラスティをシートには座らせず、横のスペースにもたれさせた。



「さぁ、キラ。ここに座って」

「で、でも・・・」

「ごめん。時間が無いんだ。

 他に、ラスティを助ける方法が思いつかない」



少しの逡巡の後、キラはモビルスーツのコックピットに滑り込んだ。



「そのベルトで、体を固定して。

 大丈夫、横にラスティがいるから、指示通りにすればいい。

 万一の時は、俺がどうにかする」



そう、どうにかする。

このチャンスを逃すつもりはない。



*** next

モビルスーツの上に倒れているはずの人は・・・忘れてね・・・
ちょっと、どうしようもなくなっちゃいました・・・えへっ
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