独り−2 | ||
キラは女の子 | ||
「おい、なにやってんだ!」 突然の大声に、キラはアスランの腕の中でびくっと震える。 アスランは反射的に、キラを庇うように腕に力を込め、声を出した人物を見下ろした。 と、そこに見覚えのある姿を見いだして、アスランは息を吐く。 「撃たれちまって、そこまで1人じゃ上がれないんだ。 手を貸してくれ」 「ラスティ、無事だったのか・・・」 「あったりまえだろ? まあ、一瞬気を失っちゃったけどな」 「わかった、すぐ行く」 キラはまだ、微かに震えていた。 そんなキラをひとりにしたくなかったが、ラスティを放っておくわけにもいかない。 本当なら、キラはここから避難させるべきだろうが・・・ 「キラ、大丈夫。何も怖いことは無いよ。 下にいるのは、俺の仲間なんだ。 キラに危害を加えたりしないし、させない」 アスランはキラを落ち着かせようと、静かに囁く。 「彼は怪我をしているんだ。 ちょっとだけ、ここで待っていてくれるね?」 「怪我?」 まだ震えたままだが、キラは顔を起こしアスランを見た。 「ああ、手当てをしてやらないと。 あの様子だと、出血がひどいのかもしれない」 ちょっとやそっとで、この程度の高さへ上がれないわけがないからな・・・。 アスランはゆっくりとキラから体を離し、キラをその場へ座らせようとする。 しかしキラは、それを止めた。 「ま、待って。ひとりにしないで。私も手伝うわ。 手当てにしろ、ここに上がるにしろ、手は必要でしょ?」 「キラ、だが・・・」 「お願い、一緒にいさせて」 アスランは迷ったが、早くラスティのところへ行ってやらなくてはならない。 「無理はするなよ?」 「・・・うん!」 アスランから離れなくていいと言われて安心したように笑みを浮かべた。 *** ラスティは、モビルスーツにもたれ、目を閉じて座っていた。 苦しそうな息づかいがキラにも聞こえてくる。 アスランとキラが近づくと、その気配に気づいたのか、目を開ける。 と、その目がさらに見開かれた。 「な、なんだ、その女の子は? 地球軍の兵士ってわけないよな? すっげぇ、綺麗だなぁ〜v って、アスラン、その手はなんだ!? ずるいぞ、こんなとこでナンパかぁ?」 ラスティは突然現れた美少女・・・キラに感嘆し、ついでアスランがその手を握っているのを見てからかう。 キラはその唐突なセリフに、目をパチクリさせた。 アスランはそんなラスティを見て、ちょっとムッとする。 「元気そうだな、ラスティ。 それなら手助けはいらないんじゃないか?」 大きくため息を吐いて言うアスランに、ラスティはニヤニヤと笑う。 早く処置しなければならない大怪我のはずなのだが、ラスティは余裕だ。 アスランが口ではどう言おうと、自分を見捨てたりしないことを知っているから。 「ちょっと、アスラン!」 慌てたのは、キラだけだ。 そわそわしながら、アスランとラスティの顔を見比べている。 アスランはキラから、先ほどまでの不安定な様子が消えていることで気を緩めた。 「冗談だよ、キラ」 落ち着いて。 キラに微笑んだアスランはキラの手を放し、ラスティの横にかがみ込む。 出血の多さに眉をひそめながら、装備を外し、パイロットスーツをはだけた。 「これ、は・・・」 キラもアスランも、はっと息をのみ、手早く応急手当をしていく。 予想以上に、ひどい。 よくこれで、意識を失わないでいられるな・・・ 止血は効いたが、一刻も早く、きちんとした処置をする必要があった。 「薬は飲まないよ」 「馬鹿を言うな! これじゃあ、身動きひとつでひどい痛みを感じるだろうが!」 アスランが差し出した薬を、ラスティは拒む。 手当てするのに動いたせいか、ラスティの息づかいが荒くなってきていた。 「薬で動けなくなったりしたら、同じことだろ? ここから、このモビルスーツを持っていくんだ。 手足が言うことをきかなきゃ、無理だろうが」 「俺が運ぶ。 おまえを片方のモビルスーツに座らせて、抱えていく。 それでいいだろう」 「それこそ、馬鹿を言うなって返すぞ。 ここを出れば、奴らが待ちかまえてるんだ。 二人揃って、墜ちちまう」 *** next |
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ラスティは生きていたということで あれでラスティが死んだと決めつけたアスランがちょっと不思議 |
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