今なら・・・−1 (本編28話より)


TV本編第28話 トリィを追うところから


「トリィーっ!」



突然飛び立ち、建物から出てしまったトリィを探し、キラも外に出る。



早く、見つけないと。



「トリィーっ!ト・・・」



大声で呼びながら辺りを見回したキラの視線の先に、4人の少年達がいた。

その中の1人、見覚えのある姿にキラの目が見開かれた。



「アス、ラン・・・?」



キラは、彼の名を小さく呟く。

トリィを手に留まらせた少年は、ゆっくりとキラに歩み寄ってきた。



月で別れてから、三年。

再会してからはいつもパイロットスーツを着て、ヘルメット越しで・・・

そのアスランが、目の前にいる。

藍色の髪に、翠の瞳。



「ア・・・」

「君、の?」



呼びかけようとしたキラを遮り、アスランが話しかける。



キラは、はっとしてアスランの後方に佇む3人に目をやった。

キラとアスランを見ている。



アスランは、彼らに僕のことを知られないようにしてくれているんだ。

きっと彼らはアスランと同じ、ザフト兵。

僕も、知らないふりをしなくちゃいけない。



理性が、キラを抑えた。



キラはアスランと見つめ合う。



「・・・うん、ありがとう」



アスランがトリィを差し出すのに、キラも手を伸ばす。



あの時と、同じ。

アスランが、僕にトリィを作ってくれて。

アスランの手から僕の手に、トリィが飛び移った。

でも今、僕らの間には、あの時には無かった壁がある。



アスランが踵を返す。



「昔、友達に・・・!」



これだけは、これだけは言わなくちゃいけない。



キラの呼び止めるような叫びに、アスランは足を止め振り返った。

瞳を揺らしたキラは、アスランを見つめて続ける。



「大事な友達にもらった、大事なものなんだ」

「・・・そう」



キラの言葉を聞いたアスランは、微かに顔を歪めた。

辛そうに、悲しそうに。



通じてる。

僕にとって今も、アスランが大切な友達だって。

そして・・・アスランもまだ、僕を友達って思ってくれてる。



いっぱい、話したいことがあるのに。

やっと会えたのに。

けど今、言ってはいけないなんて。

もう、会えないかもしれないのに・・・っ!



と、遠くで、車が急停車する音が響いた。

びっくりしてキラが振り向くと・・・



「キラ――――――――っ!」

「カ、カガリ!?」



カガリが大声でキラを呼びながら、必死の形相でこちらへ駆けてくるところだった。



キラが再び柵の方を見ると、アスランが足早に離れていく。

それを見たキラは、とうとう、我を忘れてしまった。



「待って!待ってよ!」



キラ柵にしがみつき、大声でアスランを呼んだ。

アスランは驚いて足を止め、振り返る。



今までとは違う。

アスランと対峙したのは、いつだって戦場だった。

キラの後ろには常に、キラが守る人達がいた。

でも今この時、キラを引き留めるものはない・・・



「キラ、どうしたんだ!?こいつに何か、されたのか!?」



カガリはキラの近くまで来て、キラの前にいる人物が、思った通りアスランであったことで、焦りを抱いた。

キラの肩に手を掛け、キラを揺さぶるが、キラはカガリを見ようともしない。



キラにはもう、アスランしか見えていなかった。

横にカガリがいることなど既に忘れて、アスランだけを。



「もう、会えないの?

 ねぇ、もう嫌だよ、こんなの。

 アスラン・・・」



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