再会−20


キラは女の子です


「私、アスランの傍にいたい」



アスランの言うとおり、キラは戦争やそれに関わるものは嫌い。

でも、はっきり嫌だと言えなかった。

嫌だと言ってしまえば、そこに身を置いているアスランとは、また別れなくてはならないから。



「アスランは、私にいて欲しくないの?」

「ああ、そうだ」

「・・・え?」



期待と違うアスランの返事に、キラは呆然とする。



「アス・・・ラン。私・・・と、一緒に・・・いたくない・・・の?」

「ち、違う。そうじゃない。違うんだ、キラ」



言葉が足りなくてキラが誤解したことに気づいたアスランは、慌てて否定した。



「だって・・・」

「キラといたい。それは本当なんだ。信じてくれ。

 だが、俺の・・・僕の傍にいるというのは、キラもザフトに軍属するということになるんだ。

 キラも知ってのとおり、ここは戦場で、僕達は戦争をしている。

 危険だし、ここにいれば、キラはきっと辛くなる」

だから、いて欲しくない。



「一緒にいたいとは、思う、の?」

「もちろんだ。

 言っただろう。僕はキラ、君を愛している。

 好きな相手とは、いつだって一緒にいたいさ。

 でも同時に、安全なところで、いつも笑っていて欲しいよ」

「それなら・・・っ!」



キラからは、いつのまにか迷いが消えてしまっている。



もう、決めた。



「私は、アスランの傍に、ここにいたいわ。

 アスランが、私のためを考えて言ってくれているのはわかるの。

 アスランの言うことは、もっともだわ。

 今までなら、戦争に関わるなんて、絶対イヤだったもの。

 でもね・・・」



キラは、にっこりと笑った。



「アスランがいるから、笑えるの。

 アスランがここにこうしているのを知ってしまったもの。

 ここで別れてしまったら、私は不安で笑えなくなってしまうわ」

だから、私に笑っていて欲しかったら、私をここに置いてね。



しばしキラの笑顔に見とれてしまったアスランは、はっと我に返る。



「だ、駄目だ、戦場にキラを置くなんて。

 それに・・・、そうだ、希望したからといって、ここにいられるわけでは・・・」

「あら、だって。私が役に立つって言ったのは、嘘?」



と、キラは笑顔を消し、悲しそうな顔をしてみせた。

キラがここに残るには、アスランを説得しなくてはならない。



「う、嘘なんか、吐かないよ、キラには」

「・・・私、泣いたわよ、あの日。

 アスラン、もう会う気が無かったでしょう。

 ねえ、アスランわかってる?

 私は、あなたを選んだの。

 誰よりも、何よりも。私はアスランがいいの。

 ・・・両親と別れても、ね」

「キラ・・・」



そう、アスランが懸念していた一つに、キラの両親のことがあった。

だが、キラはそれを承知の上だと言う。



「一度、志願したら、簡単には辞められない。

 両親にも、友達にも、当分会えなくなる。

 ・・・戦争が終わるまで」

「そうね・・・、それはとても悲しいわ」



言いながら、キラの目に涙が浮かんできた。

悲しくないわけがない。

今まで、当たり前に会っていた大好きな人達と、別れるのだから。



「それでも、アスランに会えないよりはいいの。

 もう、決めたの。私は、アスランといる。

 アスランと離れるのは、イヤ。

 その為に、必要なことをするの。

 アスランといられる立場を、手に入れるの」

だから、協力して。



しばらくキラを見つめて黙っていたアスランは、目を閉じる。

そして大きく一つ、ため息を吐くと目を開け、腕を伸ばしてキラを抱きしめた。

キラの顔を、胸に押しつけるようにして、腕に力を込める。



「キラの気持ちは、変わらないんだな?」

「そうよ」

「嫌いな戦争に荷担することになっても、いいんだな?」

「ええ」

「両親と、二度と会えないかもしれないぞ?」

「・・・わかってる」

「人を、殺すことになるぞ?」

「・・・・・・・・・わかってるっ!」



腕の中で、微かに震えているキラが、アスランは愛しかった。

戦争を知らないキラが、本当にすべてを理解しているはずはない。

それでも・・・



アスランにはもう、キラを手放すことなどできなくなっていた。



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