再会−10 | ||
キラは女の子です | ||
「ロックシステム!」 なんとか、気持ちを落ち着けたキラは、不意に思い出した。 あれは、あれはキラが趣味で作ったものを、教授の要望に合わせたのだ。 他のプログラムのように、教授が作ったものをキラが多少の改良をしたものとは違う。 プログラムが得意なキラの自信作だ。 あのロックが、アスラン達が奪取するといっていた兵器に付けられていたなら。 簡単には外せないかもしれない。 もちろん、アスランが優秀なことをキラはよく知っている。 アスランの仲間だっていうあの三人も、きっと優秀なんだろうと思う。 でも、万が一・・・ いえ、私の勘違いよね。 あの程度ので、モビルスーツがまともに動けるわけないもの。 そうよ。考えすぎ。 モルゲンレーテが本当に地球軍の兵器を作っているなら、当然極秘にされているはずだもの。 教授だって、いくらなんでもそんなもの、私になんて、ね。 キラはなんとか自分の考えを否定しようとする。 しかし、一度浮かび上がった不安は、どうしても消せなかった。 キラの顔色が悪くなっていく。 「どうしよう・・・」 「なにが?」 「きゃ・・・っ!」 自分の考えに没頭していたキラは、突然ミリアリアに声を掛けられ、びっくりしてしまった。 「な、なに?」 椅子に座ったまま、ミリアリアに向き直ったキラの目に、心配そうなミリアリアの顔が映る。 「キラ。あなた、やっぱり今日は変よ。 具合が悪いんじゃないの? もう、今日は帰りなさいな。 教授のは、教授自身にやらせればいいんだから。 さ、立って」 言いながら、ミリアリアはキラの腕を掴んで、立たせる。 「ミ、ミリィ、待ってよ。 別に具合なんか悪くないわ」 「何言ってるの!その顔、鏡で見てごらんなさい!」 「ミリィ・・・」 ミリアリアが、キラの心配をしてくれてるのはわかるのだが、実際、体が不調なわけではないのだ。 キラも、今日はやるつもりが無かったので、そのことはいい。 だが、まだ帰るつもりは無かった。 彼らが、ここで事を起こすのであれば、その時に会えるかもしれない。 アスランに会えるかもしれない。 あの時は、この仲間達の身が心配だからここに来ると言ったけれど。 本心は違う。 友達の安全より、アスランに会うチャンスを作りたかった。 それに危険が伴おうとも。 *** 「なんか、あっさり通れましたね」 拍子抜けしました・・・。 アスラン達四人は、偽IDを使用し、モルゲンレーテに無事侵入を果たした。 「ま、あんなもんだろ?」 「そうですか?でも、兵器を作るなら、もう少しこう・・・」 簡単に侵入できたことは喜ばしいのだが、ニコルはもっと緊張感の漂う場面を想像していたようだった。 「昨日の嬢ちゃんが、言ってたの憶えてるか? 学生にホストコンピュータへアクセスさせるんだ。 こんなもんでもおかしくないさ」 「そうですね・・・。 そういえば、今日キラさんはここに来ているんでしょうか?」 ディアッカの言葉に、キラを思い出したニコルは、心配そうにアスランを見る。 「おそらく、来てるだろうな、キラの性格だと。 だが、ニコル。今は、任務を成功させることが最優先だ」 ニコルがアスランを気遣ってくれるのは嬉しいが、すでに作戦行動中なのである。 他へ気を散らしている場合ではない。 既にいつも通りに見えるアスランは、ニコルを諭す。 「ふん。アスランの言うとおりだな。 俺達には、これから大事な仕事が残ってる。 集中しないと、失敗するぞ」 「わかってます!」 イザークに揶揄され、ニコルはむっとしながら返した。 「ただキラさんに限らず、ここに関係者しかいない前提で立てられた計画で大丈夫かって心配してるんですよ」 「まぁ、な。確かにただの学生が通ってるなんて思いもしなかったけどなぁ」 「そうでしょう。もしかして、この工場区にも入ってこれちゃうんじゃないですか?」 「そうだとしても。それは、キラが止めると思う。 事が起こるのを知っていて、友人を危険に関わらせたりしない」 アスランは確信している。 キラは人の命を大切にする。だからこそ、命を奪い合う戦争が嫌いなのだ。 友人達を守ろうとするだろう。 *** next |
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