再会−9


キラは女の子です


「キラ!待たせてごめんね」



手に乗せたトリィを見つめて物思いに耽っていて気づかなかったが、いつの間にか目の前にミリアリアとトールがいた。



「あれ、珍しいな。キラがパソコンいじってないのって」

「あ、ほんと。いつも暇さえあれば、パソコン開いてるもんね」

「それは、だって、いつも教授が次から次へと。

 昨日行かなかったから今日は、ね」



もちろん、本当は違う。

ミリアリア達の言うように、いつだってキラはパソコンに触れている。

プログラムを組んだり解析したりは、キラの趣味なのだから。

しかし昨日アスランに会ってから、キラの頭の中はアスランと、アスランが話した事でいっぱいなのだ。

とても、プログラムに集中出来ない。

今日の授業とて、辛うじて聞いてはいたが、頭に入ったとは言えなかった。



アスランに会えて嬉しいのと、次にいつ会えるのかという不安。

なによりも、アスランが軍に入っているということが、キラの知らないところでアスランの身に何があってもおかしくないだろうことこそが、キラを落ち着かなくさせている。

だが、そんなことを、アスランとその仲間の人達のことをミリアリア達に言うことはできないのだから、心配させるようなことも言えなかった。



キラは努めて、笑顔を浮かべる。



「あはは、そうか。

 でも、安心しろよ。教授、ちゃんと次を用意していたぞ」

「そうそう。教授ってば、なんであんなにキラにさせる事を見つけてこられるのかしらねぇ。

 ねぇ、キラ。教授のって、モルゲンレーテのなの?」

「そうよ。なんの、かは知らないんだけど」



そう、カトー教授には今までもよく、プログラムの解析などを頼まれた。

でも、そういえば、最近は多いわね。



「え?キラも知らないの?」

「わからないことやってるのか?」



ミリアリアもトールも意外そうだ。

だが本当にキラも知らない。

あれ?そういえば・・・



「・・・ラ!キラってば!」

「え?あ、ああ、ミリィ。何?」

「何?じゃないわよ。どうしたの、今日、少し変よ?

 心ここにあらず、って感じだもん。

 大丈夫?具合でも悪い?」



ミリアリアが心配そうにキラの顔をのぞき込む。



「平気。ちょっと考え事しちゃっただけよ」

「そう?・・・それならいいけど。無理しちゃダメよ?

 教授のなんか、別にキラが無理にやることないんだからね」

「そうだよな。教授はモルゲンレーテに協力するってことであそこにラボもらってるんだから。

 それをキラにやらせてるってのは、狡いよなぁ」

「うふふ。そうね。

 まぁ、代わりにあそこのコンピュータにアクセスし放題だけど」

「キラにはそれが特典になるのね・・・」

「ま、キラがいいなら、いいさ。

 じゃあ、そろそろ行くか?教授、キラを待ってるぞ、きっと」



***



「このプログラムって・・・」

教授から用意された、キラ専用のブースで、キラは呟いた。



カトー教授のラボでは、先に着いていたゼミ仲間のサイとカズイが、キラ宛てのディスクをあずかっていた。



プログラムに集中できないから、今作業はできないのだが、気にはなるので中身を見てみる。

と、今まではわからなかったことが、わかる気がする・・・。

このプログラム自体が今までのものと違うというわけではない。

ただ、キラには、昨日のアスランの言葉が思い出されるのだ。



「これは、まさか?」



キラの脳裏に、嫌な想像が湧き起こった。

その想像を消したくて、今までキラが触れたプログラムを、片っ端から開いて見る。



いろいろな機能を制御するプログラム。

ロボットの手足を動かす為のプログラム。

OSや、そのロックシステムなどもある。



これに、地球軍の兵器、とくれば。



「まさか、モビルスーツ?

 でも、地球軍にはたしか、モビルアーマーしかないって」

開発って言ってたから、それもありなの?



ううん。ナチュラルにはモビルスーツの制御は無理だって聞いたことある。

第一、私が作ったこれらのプログラム程度で、とても戦闘行為は無理だわ。



違う、わよね?

私が、兵器開発に協力していたわけじゃ、ないわよね?

地球軍に、レノアおばさまを殺した人達に、私が協力なんて・・・。



だがそう思って見てみると、ここ最近のプログラムは皆、モビルスーツ用のものに思えてきてしまう。



「そんな・・・。アスラン、もしそうだったら、どうしよう。

 私のプログラムが、兵器に使われてるのかな?

 私、私、そんなの嫌よ・・・っ!」



キラは、手のひらを握りしめ、泣き出してしまわないように耐えた。



*** next

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