再会−8 | ||
キラは女の子です | ||
「今日はもう、教授のところへは行けないわね。 ミリィに休むかもって言っておいて良かった」 平然としたまま、キラは呟く。 が、我慢はここまでだった。 「アスラン、せっかく会えたのに・・・っ!」 キラの目から、涙が溢れる。 アスラン達から見えないところまで来ると、もう、悲しみをこらえることができなかった。 「トリィ」 手の中のトリィが、キラを慰めるように鳴く。 「トリィ・・・。 仕方、無いわよね。アスランは遊びでここにいるわけじゃないんですもの」 アスランにはアスランのするべき事があって、私と一緒には・・・。 キラはトリィ話しかけながら、自分を納得させ、気持ちを落ち着かせた。 だが・・・ 「そうだ。・・・レノアおばさま、亡くなったって・・・」 やっと冷めた頭で、先ほどアスランに教えられた事実が、思い出されてしまう。 「アスランのことが秘密なら、母さんにおばさまのことも言えないのよね」 アスラン達の作戦が完了すれば、話してもいいかな。 明日、アスランに訊いてみよう。 ・・・明日、連絡があればだけど、ね。 キラにもわかっていた。 アスランが、キラに連絡をくれる可能性が低いことを。 彼らは作戦行動中なのだ。 余計な行動をとることは、彼ら自身を危険にさらすかもしれない。 「元気で、だなんて。 もう会えないって言ってるようなものじゃないの」 *** 「あんな別れで、本当によかったんですか?」 工作員からモルゲンレーテのゲートを通る偽IDを受け取り、アスラン達四人は宿泊しているホテルへ戻り、作戦内容の詳細について、再確認を済ませた。 作戦は、明日決行。 イザークとディアッカの部屋から戻ってアスランと二人きりになったニコルは、昼間会ったキラの様子を思い出して、アスランに訊きたくなった。 「キラさんは、あなたと明日も会えると思っているんですよ? きっと、とても悲しむんじゃないですか?」 アスランには、ニコルがキラと、アスランのことも心配して言っているのがわかる。 確かに、キラもとても悲しむだろう。 しかし、別れ際のキラの様子からすると・・・ 「それは少し違うと思う」 「え?」 「キラは、たぶんわかってる。・・・会えないだろうことは」 笑顔、だったが。 あの後、おそらく泣いただろう。 「アスラン・・・」 「行方が知れなくなって。 キラに再会したら、二度と離さないと決めていたのに。 ・・・まさか、こんなタイミングで、とはね」 心配そうにアスランを見るニコルに、アスランは力無く微笑む。 「どうしようもないだろう? できることなら、攫って行きたいくらいだがな」 「攫っちゃえばいいじゃないですか」 は? 「ニコル?」 今、なんか言った、か? 「キラさん、攫って行きましょうよ。 やっと会えたんでしょう?恋人になったことでもありますし」 にっこり。 今まで、いつでも無表情だったアスランが、初めて感情を見せている。 いままでの、冷静沈着で優秀な軍人のアスラン・ザラに、ニコルは憧れていた。 だが、今の、己の心を表に出したアスランも悪くない。 あのキラという少女を、アスランがどれだけ想っているのかが、ニコルにもよくわかった。 「キラさんだって、アスランと一緒にいたいでしょう。 僕も協力しますから、連れてっちゃいましょう!」 にこにこ、にっこり。 笑顔でアスランに誘いかける、ニコル。 「・・・・・・・・・だ、駄目だ! キ、キラには、ここに両親がいる。 今度はその両親と離ればなれになってしまう!」 一瞬、ニコルのこの誘惑に乗りそうになったアスランだが、なんとか理性で留まる。 「でも、キラさんは、ご両親よりもアスランを選びそうな気がします。 いえ、キラさんに限らず、女性は恋人をとるんじゃないでしょうか?」 キラが今、アスランを選べば、キラは家族や友人との別れを意味する。 それでも、キラがアスランを選べるだろうか? 「そう、だな。キラが俺を選んでくれるなら、連れて行くだろう。 ・・・時間が無いのが残念だな。 キラに訊ねる、キラが考える時間が無いのが」 アスランはキラが欲しい。 攫えるものならば、攫っていきたい。 だが、キラが悲しむことを、キラの意志に添わないことを強制することはできない。 キラが幸せに笑っていることこそが、アスランが一番望むこと。 連れて行って、キラが悲しんでいたのでは、意味がないのだ。 *** next |
||
Top | Novel | |||||||