再会−7 | ||
キラは女の子です | ||
「あそこにただの学生が、何人も毎日通ってる?」 「そうよ。教授はカレッジの研究室よりモルゲンレーテの方が気に入っているの。 私も、あそこのコンピュータが使えて便利なのよ」 「学生が、あそこのコンピュータを使えるのか」 いくらなんでも、軍需産業の会社が、学生にホストコンピュータにアクセスさせるなど、ありえるはずが無い。 「あ、違うの。私、教授からよく頼まれるのよ。 大抵プログラムの解析なんだけど、やっぱりパソコンじゃ遅くて。 教授にそう言って断ったら・・・ あの、このこと内緒にしてね? 教授、私が自由に使えるようにしてくれたの。 ほんとはまずいんだけど、今、すごく忙しいらしいのよ」 忙しいから? それだけの理由で? モルゲンレーテのセキュリティは厳しいはずなのに? そもそも、教授の立場の人間が、学生に何を頼むって? 聞いた四人は、会ったこともないその教授とやらに呆れてしまった。 「それで・・・、アスラン? モルゲンレーテで何があるの?」 キラが心配そうにする質問に、アスランは仲間達を見る。 彼らに、アスランを止めようとする意志が感じられないので、はっきり言うことにした。 「モルゲンレーテがこのコロニーで、地球軍の新型兵器を開発している。 僕らはそれを阻止しなければならない。 戦争を早く終わらせるために、それを許すわけにはいかないんだ」 地球軍? 兵器開発? 「ここは、中立国オーブのコロニーよ? 地球軍に協力するわけ・・・」 「本当に、そう思うのか。中立国だから、と」 そんな風に念を押されては、黙るしかない。 キラにだって、そんなものが建前に過ぎないことがわかっている。 ただ、そう思いたいだけなのだ。 「・・・ザフト軍は、ヘリオポリスを攻撃してくるの?」 「そうじゃない。そうじゃないんだ、キラ。 言っただろう。モルゲンレーテに近づくな、と。 僕らはモルゲンレーテから、その兵器を奪取する」 キラは俯いて、脚の上で手を組み、少し震えている。 アスランがそのキラの手に、自分の手を載せて包み込むと、キラはハッとしてアスランを見た。 「信じて欲しい。僕らはここを破壊したくない。 破壊するだけなら、今ここにいる必要はないんだ。 できるだけ被害を出さないために潜入している」 キラは一度目を伏せた後、キラの前に立つ三人の顔を見回して、静かに訊いた。 「皆さんも、同意見ですか?」 「街に、被害を出したくありません」 「まぁ、破壊活動がしたいわけじゃないからな」 「・・・任務を遂行するだけだ。攻撃が目的ではない」 三人の答えを聞いたキラは、俯いて安堵のため息を一つ吐く。 次に顔を上げたキラは、目に涙を浮かべながらも、笑顔だった。 「皆さんを信じます」 *** 「兵器ということは、工場区ですよね。 私達がいるのは研究棟ですから、かなり距離があります。 騒ぎが起こったら、すぐ避難しますから心配しないでください」 これからしばらく、モルゲレーテに行かないように言われたキラは、聞き入れなかった。 キラ一人が行かなくても、友人達を引き留める理由が無いのである。 友人達の心配をするよりは、一緒にいた方が安心できるから、と。 「それよりアスラン、約束守ってね?」 「ああ。ヘリオポリスにいる限り、毎日連絡をするよ」 アスラン達は、ここで待ち合わせをしていたのである。 そろそろ予定の時間が近くなったので、部外者であるキラを一緒に居させるわけにはいかなかった。 もちろんキラは、簡単には承服しなかった。 やっと会えた幼なじみ、今や恋人となった相手と、次にいつ会えるかわからないのである。 アスランが連絡をとると約束して、やっと不承不承ではあるが、首を縦に振った。 「待ってるからね。絶対よ」 「わかってる」 アスランは、窓枠に留まっているトリィを手に載せ、キラに差し出す。 「トリィ」 「さぁ、トリィを忘れないで」 「うん」 トリィを受け取ったキラの頬に片手をあて、そっとその唇にキスをする。 キラは一瞬なにが起きたかわからなかった。 が、理解した途端、顔が真っ赤になる。 「ア、アスラン・・・!」 「愛してる」 「わ、私だって、・・・愛してるわ」 二人は見つめ合った。 次にいつこうして会えるかわからない。 明日、会えるかもしれないが、当分会えないこともあり得る。 けれど、いつまでもこうしているわけにはいかなかった。 「元気で」 「アスランもよ。 皆さんも、今日はお会いできて良かったです。 また、お会いできる日を、楽しみにしています」 笑顔で挨拶をして、キラは公園を出ていった。 *** next |
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