再会−6 | ||
キラは女の子です | ||
「アスラン。せめて・・・ここで話すのは止めろ」 自失していた三人のうち、最初に我に返ったのはイザークだった。 すぐさま怒鳴ろうと口を開けたのだが、なんとかため息を吐くに留めた。 彼とて、騒ぎを起こしてはいけないと自覚している。 イザークに続いて正気に戻ったディアッカとニコルは、そんな彼を見てホッと息を吐いた。 アスランは、チラッとイザークを見てから、腕の中のキラに話しかける。 「キラ」 「う、うん。ちょ、ちょっと、待ってね。今・・・」 アスランの胸に顔を押しつけているキラの声は少し、震えている。 キラは、大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着かせた。 そっと、アスランから離れて見上げると、アスランが微笑んでいる。 キラも、アスランに微笑んだ。 「ちょっと、私、情緒不安定ね?」 「僕のせいだろう?・・・おいで」 アスランはキラの背に手をあて、先ほどまで自分が座っていた、休息所の椅子へ導く。 「さ、ここへ座って」 そしてアスランがキラの横に座ると、その正面に他の三人が立った。 アスランが三人に顔を向ける。 「お前達はいらないが」 「「「アスラン・・・」」」 「ここまできて、それはないでしょう」 「そうそう。このお嬢さん、紹介しろよ」 「あんな話をして、このままにしておけるわけが無いだろう」 ニコルとディアッカはともかく、イザークにはキラに話しても問題無いことを納得させなければならない、か。 「わかった。紹介する。 彼女はキラ・ヤマト。幼年学校から三年前まで、月で一緒だった幼なじみ。 キラは一世代目のコーディネイターだから、両親はナチュラルだ。 それでこの中立のコロニーに居るんだと思う」 キラの現在を知らないので、キラを見る。 「初めまして、キラ・ヤマトです。 アスランの言う通り、戦火を避けてこのコロニーに移住しました。 IDはもともとオーブのものでしたし。 今は、工業カレッジの学生です」 にっこり笑う。 「ニコル・アマルフィーです。よろしく、キラさん」 「俺は、ディアッカ・エルスマン。よろしくな」 「イザーク・ジュールだ」 キラがコーディネイターと聞いたせいか、妙に皆、愛想が良くなった。 イザークは・・・自分から名乗っただけでも良いといえるだろう。 「さっきも言ったが、この三人は同僚だ。 ここへは任務で来ている。 だから・・・キラには僕達のことは黙っていてもらわなくてはならないんだ」 「じゃあ、母さん達にも会ってもらえないのね?」 寂しそうに言うキラに、心が痛いがこればかりは仕方がない。 「ごめん」 「ここには、いつまでいるの?」 「それは、まだわからない。 早ければ明日、遅くとも一週間くらいの予定だが」 「明日・・・。また、会える?」 「任務が終われば、もうここへは来れないだろう」 「そう・・・」 キラは俯いてしまった。 「任務って何?この中立の場所で、何するの? それって、すぐ終わることなの?」 「それは・・・」 口を開くアスランに、他の三人もこれ以上黙っていられない。 「待ってください、アスラン」 「民間人に話してどうするよ」 「作戦は極秘。漏洩するつもりか」 彼らの言う事が正論だ。 アスランとてわかっている。 アスランは彼らの顔を見て、キラを見る。 「キラ。君を巻き込んでしまうから、内容は言えない。 ただ・・・これだけは、言っておく。 モルゲンレーテには近づいちゃいけない」 まあ、キラがあそこに用があるわけないが。 「「「アスラン!」」」 作戦内容を言わなくても、それでは「モルゲンレーテで何かします」と言っている。 任務について、漏洩しているに等しい。 「私、今、モルゲンレーテに行く途中だったんだけど」 「「「「は?」」」」 「エレカで、ゼミの友達と。 途中でトリィがここに飛んで来ちゃったから、私だけ追いかけてきたの。 友達には先にモルゲンレーテに行ってもらったけど」 ・・・・・・・・・。 「どうして、キラさんがモルゲンレーテに?学生なんでしょう?」 「ゼミのカトー教授のラボがあそこにあるの。 それで、私達は毎日そこに通って実習を・・・」 「「「「毎日・・・」」」」 *** next |
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