再会−5


キラは女の子です


「あの、アスラン・・・?」



突然声がして、キラはびっくりしてアスランの胸から頭を起こす。



え・・・?

あ!人がいたんだった!



驚きで涙も止まったキラは、焦ってアスランから離れようとするが出来ない。

アスランがキラの背と腰に手をまわしている為、動けないのだ。



「ア、アスラン・・・!」



アスランは、やっとその腕に抱けた愛しい少女を離したくなかった。

しかし、キラは恥ずかしがってもうそれどころではないらしい。

一つため息を吐き、諦めて腕を解いた。



動けるようになったキラは、すぐさまアスランから飛ぶように離れる。

その顔は真っ赤で、一瞬ニコルに目をやった後、背を向けてしまった。



そんなキラの様子にもう一度嘆息してから、ニコルに向き直る。



「なんだ、ニコル」

「なんだ、って。・・・アスラン、僕達がここにいる理由、憶えてます?」



ニコルに向ける顔は、既にいつも通りのアスラン。

だが、ニコルへの答えは・・・いつものアスランとは思えなかった。



「・・・ああ、そういえば忘れていたな」



忘れ・・・って、アスラン、正気ですか?

ニコルは唖然として二の句が継げなかった。



「イ、イザーク、落ち着け、な、頼むから」

同じくアスランの答えを聞いたイザークがまた怒鳴りそうになったので、ディアッカは止めるのに必死だ。



アスランがここにいる理由?

ニコルの言葉にキラも反応していた。



そういえば、嬉しくてうっかりしてたけど。

プラントにいるはずのアスランが、なんでヘリオポリスにいるのかしら。

たしか、プラントの人がここへ来るのは簡単じゃないはずよね。



キラの好奇心が、羞恥心を上回り、アスランを振り返った。



「アスラン。どうやってここに来たの?

 プラントからの入国って、かなり審査が厳しいって聞いてるけど」



キラの言葉に、アスランではなく、他の三人が動揺した。

彼らは身分を偽って入国している。

彼女の言うように、プラントからでは入国できないはずなのだ。

しかし、彼女はアスランがプラントから来たと確信している。



これをどう誤魔化すか・・・

イザーク、ディアッカ、ニコルの三人は、声に出さずに相談しようとした。

が・・・



「ああ、ちょっと不法入国を」



アスランはあっさりと、キラに告げてしまう。

キラにはアスランが冗談を言っているようには見えなかった。

キラは目を丸くした。



「ほんとに?すごい、どうやったの?」



キラは、常識より好奇心を優先してしまった。



「いろいろと、ね。協力者がいるから」

「そうなの?でも、良かった。おかげでアスランに会えたもの。

 その人に、私も感謝しなきゃ。

 ・・・ところで、そちらの人達、アスランのお友達?」



キラはやっと、アスランに連れらしき少年達がいたことを思い出した。

キラとアスランが彼らを見やると、皆一様に固まっている。



アスランが言ったことは、本来決して口にしてはいけないこと。

自分からばらすなど以ての外。

それをアスランは目の前でやったのだ。

聞いていた三人が意識を飛ばすほど驚くのも当然である。



しかしアスランは気にしなかった。



「いや、仕事仲間だ」

「あ、じゃあ、アスランは仕事でヘリオポリスに来たのね。

 協力者っていうのも、その関係なんだ?」

「そうだ」

「アスラン、もうお仕事しているのか。昔から優秀だったもんね。

 どんな仕事してるの?」



アスランは、キラに隠し事をする気は無かった。

だからすべて本当の事を話す。

しかし、さすがにこの質問には答えづらかった。



「・・・軍人だ」

「そう、軍人なの。・・・・・・・・・軍人?」



軍人って、軍人よね。戦争する人。

アスランが?戦争を嫌っていたアスランが軍人?



「・・・ザフト軍?」



アスランはプラントから来たのだから、軍といえばザフトだ。

そんなことは、キラでもわかる。



「・・・ああ」



キラはアスランの答えに顔を曇らせた。



「アスラン、戦争なんか嫌いって言っていたのに・・・」

「今でも嫌いだよ。けど、戦う理由ができた」

「・・・戦う、理由・・・?」



アスランはキラを胸に抱き寄せる。

とても顔を見ながら話す気になれなかった。



「母が死んだんだ。・・・ユニウス7で」



アスランの腕の中で、キラはびくっと体を震わせた。

ユニウス7・・・血のバレンタインのことだ。



「レノア、おばさま、が?」

「・・・・・・復讐したいわけじゃない。

 だが、二度とあんなことが起きるのは耐えられない。

 守りたいものを守るために、戦おうと決心した」



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