再会−3


キラは女の子です


「地球軍がここで新型兵器を作っているっていうのは、本当なんでしょうか?」

ここは、こんなに平穏なのに、とニコルが憂い顔で言う。



「隊長が言うんだから、そうなんだろ」

あの人、無駄なことはさせないよ。

ディアッカは肩をすくめる。



「その確認の為に俺達が潜入してるんだ」

見た目でわかるものか。

イザークは不機嫌そうに吐き捨てる。

任務とはいえ、ナチュラルだらけのところにいるのが気に入らないらしい。



「それは・・・っ、それは、そうですが。ここで戦闘はしたくありません」

ここで作戦を実行すれば、街にも被害が出る。

何も知らない人が、巻き込まれるのをニコルは心配しているのだ。



「ここにあれば、仕方無いだろう」

「地球軍に協力するなら、俺達の敵だし?」

イザークとディアッカは、元々ナチュラルが嫌いなので気にしない。



「・・・でも、ここには同胞が、コーディネイターだっているんです」

ニコルは尚も言い募るが・・・



「ナチュラルと馴れ合ってる奴らだ」

「それが、任務なんだからさ。気にしたって仕方ないだろ」



任務、と言われれば、ニコルとてどうしようもない。



「アスラン・・・」



それでもニコルは諦められず、ずっと黙ったままの仲間に意見を求める。



「ニコル。これは任務だ。

 それに、被害を最小に留める為に、俺達は今ここにいるんだ」



そう、武力にまかせての侵入・破壊・奪取は容易い。

それを敢えて、彼ら四人が潜入しているのは、できるだけ穏便に事を運ぶためなのだ。



ザフト軍が入手した情報では、地球軍がここヘリオポリスで新型兵器を開発しているというのだ。

地球軍の新型戦艦とMSを、中立国のモルゲンレーテ社が開発・製造している。

これをそのまま放っておくことはできない。



戦艦は、別働隊が破壊する。

彼ら四人は、モルゲンレーテ社に侵入しておき、騒ぎに乗じてMSを奪取、又は破壊することだ。



モルゲンレーテのセキュリティは厳しい。

侵入するためには偽造IDが必要で、彼らは工作員との接触するために、ここで待っているのだ。



指定された場所、公園の休息所はあまり広くないので、四人が居れば他の人間は近寄って来ない。

だから、彼らは安心して会話ができる。



「しっかし、暇だなぁ」

「まだ、一時間もありますよ、約束まで」

「なんで、そんなに遅いんだ」

「って、イザーク。彼らが遅いんじゃないです。僕らが早いんです」

「そうだよな。予定より早く出てきたから」



「トリィ」



「あれ?今、上から声が聞こえませんでしたか?」

「そうか?」



ニコルは上を見上げるが、そこには屋根が見えるだけだ。



「トリィ」



「やっぱり聞こえる」



ニコルが休息所を出ると、上空を緑色の鳥が旋回しているのが見えた。



「鳥ですよ!コロニーにも鳥がいたんですね」

プラントにならいますけど。



関心したように言うニコルに、興味を持ったディアッカも出てくる。



「どれどれ。・・・へぇ、ほんとだ。でも、なんかあれ変じゃないか?」

「変って、そうですか?・・・アスラン、珍しいですね」



いつの間にか、ニコルの横にアスランが立っている。

普段、何事にも無関心なアスランが、上空の鳥を熱心に見上げていた。



ニコルの呼びかけに、アスランはだが応えない。



あれは・・・まさか・・・

旋回している緑色の鳥。アスランはあれに見覚えがある。



アスランがつい、と手を伸ばすと、鳥は待っていたかのようにその手に留まった。



「トリィ」



アスランの手の上で首を傾げて鳴くのは、昔幼なじみに、アスランがキラに作ってあげたものだ。



これは、確かに・・・

じゃあ、キラはここにいるのか?



「その鳥・・・ロボット鳥じゃないですか」



アスランの手に留まった鳥を、ニコルはまじまじと見つめる。



「ロボット鳥?へぇ、珍しいな」



ディアッカがひょい、と捕まえようとすると飛び立つ。



「あはは。嫌われてますよ」

「はん。ロボットに好きも嫌いもあるかよ」



ニコルとディアッカの軽口に、我に返ったアスランは、屋根の下へ戻る。



キラ・・・。確認したいが、今は任務中だ。

ここにいる可能性があるなら、後で調べることもできる。



「トリィ」



「あ。また降りてきた・・・って、わぁ!」



一度上空へ舞い上がった鳥は、急降下してきてニコルの脇を通り過ぎた。



「トリィ」



鳥はアスランの肩に留まった。



「なんだ、それは」



不機嫌なままのイザークが、アスランの肩に乗ったものを指す。

が、アスランは聞いていなかった。



この鳥がアスランにばかり懐くのは、マスター登録がされているからだ。

本来なら、キラに渡す前にアスランは削除するつもりだった。

だが、なんとなく嫌で自分ではできず、キラに自分で変えるように言った。

つまりキラは、アスランの登録を消さなかったことになる。



「おまえ・・・」

アスランが手を肩に寄せると、鳥は飛び移る。

そのまま顔の前に持ってきたアスランは、鳥を見つめて微笑んだ。

嬉しげに。



「トリィ」



キラ。僕を憶えていてくれるんだね。



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