守るから (TV本編第13話より)


地球降下寸前
実際には、デュエルとバスターしか先陣突破してこなかったんですが・・・


『G四機、先陣隊列を突破!メネラオスが応戦中!』

このままじゃ・・・

『艦長!ギリギリまで俺達を出せ!』
『何を馬鹿な!・・・俺達?』

このままじゃメネラオスも、あの子も危ない・・・

「ストライクは単体でも降下可能です!」
『どうして貴方・・・そこに・・・?』
『わかった。ただしフェイズスリーまでに戻れ。』

***

ストライクがAAを出ると
それまでメテラオスを攻撃していたデュエルが襲いかかってきた。

「く・・・!もう、やめろーっ!」

いくらかわしても、デュエルは攻撃を止めない。
このままでは、デュエルも地球に墜ちてしまうだろう。
それでも執拗に、ストライクを攻撃するデュエルだったが
偶然にも、ストライクとの距離が離れた。

機体は地球の重力に引かれ、機動力が落ちている。
これだけ離れれば、もう斬りつけてくることは無理だろう。
他のG三機も、既に重力に捕まっているようだ。
キラが息を吐いた時、降下するシャトルが見えた。

「メネラオスのシャトル?」
よかった。無事だったんだ。

キラの顔に笑みが浮かぶ。
キラがシャトルの窓に、あの少女を見たような気がした瞬間・・・
シャトルが爆発した!

「あ、あ、・・・」
な、に・・・?・・・え?

『キラ!キラ!戻って!キラ!』

驚愕に震えるキラには、ミリアリアからの呼びかけは届かなかった。

***

キラが目を覚ますと、見慣れない部屋にいた。

「ここは・・・?」

部屋を見回すと、かなり広い部屋で
調度品もみるからに高級品のようである。

確か、地球降下をしたはず。ここは地球なのかな?

コン、コン。
ノックの後、扉が開き、黒髪の女性が入ってきた。

「あら、起きたのね?よかったわ。
 ずっと意識が戻らなくて、心配してたのよ」
彼女は手を伸ばして、キラの額に触れた。

キラはびくっと引いたが、彼女は気にしない。

「ん。熱は下がったみたいね」
安心した、と笑った。

「あの、ここはどこですか?」
「え?ああ、そうそう。あなたずっと意識なかったものね。
 ここは、バナディーヤよ」

そこまで聞いたとき、再び扉がノックされた。

「どうぞ」
「失礼します」

彼女が返事をすると、部屋に入ってきたのは・・・

「アスラン!?」

***

「キラ」
「アスラン・・・」
なんでアスランがここに・・・?

あの女性、アイシャと名乗った彼女が部屋を出るまで
アスランは入り口の傍に立って、キラをじっと見つめていた。

部屋の中にキラと二人だけになった途端
アスランはキラに駆け寄り、キラを抱きしめた。

「キラ、キラ・・・。よかった。ほんとうによかった!」

突然現れ、キラを抱きしめながら涙を流すアスランに
状況が認識できていないキラは戸惑ったが
やがて、おずおずと両腕をアスランの背にまわした。

こうしてアスランに直に会えるなんて、思わなかった・・・

キラの目にも涙が溢れた。

***

「あの降下の時、キラ、ストライクの制御をしなかっただろう?」

かなり長い時間、二人は抱きしめあっていた。
気持ちが落ち着いてから離れ、アスランはキラに説明し始めた。

「ストライクはAAと離れてしまったんだ」
アスランはイージスからその様子を見ていた。

「ぞっとしたよ」
そう、恐怖を感じたのだ。キラが失われる、と。
戦場で戦う決意をしたはずなのに。
キラの乗るストライクを倒そうとしていたのに。

イージスはその時、かなりストライクに近い場所にいた。
だから、イージスの推力を最大にして、ストライクにつくことができたのだ。

いくら大気圏に突入できるスペックがあろうと
ただ落ちていって、無事で済むはずはない。
アスランがイージスで、ストライクの突入を助けたからこそ
ストライクは、無事、ではないが、地球に降下できた。

二機が落ちたのは、砂漠の中だった。

***

「ここバナディーヤは、砂漠地帯にあるザフト軍の前線基地なんだ」

ずっと黙って聞いていたキラは
この言葉に、びくっと震えて俯いてしまった。

「ここは、ザフトの中なんだ」
「ああ。この基地が、僕らの回収に来たんだ」
「じゃあ、僕は捕虜、ってことか」

予想しなかったわけではない。
なにしろアスランは軍服を着ているのだ。
ここがザフト軍の施設であることも当たり前だろう。
しかしそれは、地球軍で戦ってきたキラにとって
ここは敵地で、自分は捕まっているということを示している。

「ちがう!」
だがアスランは強く否定した。

「キラは、民間人だ。IDでヘリオポリスの学生と確認された」
「でも、僕はストライクで・・・」
「状況に巻き込まれ、地球軍に強制されてのことだ」
「ザフトと、君と戦って・・・」
「だまれ!」

低い声で話していたアスランが、激昂する。

「だまるんだ、キラ!君が自ら戦うわけがないだろう!」

とても辛そうな顔をするアスランに
キラは、アスランがキラを想う強さが伝わってきた。

キラはベットから立ち上がり、アスランを抱きしめる。

「アスラン・・・。ごめんね」
「何を謝っている?」
「いろいろ。一番は、アスランを苦しめたこと。
 僕は、AAに乗った友達や民間人を死なせたくなかったんだ。
 AAにはストライクとMA一機しかなくて。
 ストライクには僕しか扱えなかった・・・」

友達、のところでアスランがぴくっと反応するのを感じた。

「アスランより、AAにいる友達の方が大事なわけじゃなかったんだ。
 ただ、みんながAAに乗ったのは、僕が原因だったから。
 見捨てることができなかった」
「・・・キラは優しいから・・・」
「優しいのは僕じゃない。君だよ、アスラン」

***

「それで、結局僕はこの後どうするの?」
捕虜でないのは嬉しいけど。

「体調が戻るまでは、ここにいる。僕もね」
「アスランも体、悪いの?」
「ああ。さすがにMSでの降下はきつかったよ。
 最中は、キラのことで頭がいっぱいで気にならなかったんだがな」
アスランは苦笑している。

「ありがとう」
「ん?」
「アスランが助けてくれたから、こうしてまたアスランと話せる」
微笑むキラにアスランは
「そうだな、それじゃあ、恩に着せようかなぁ」
いたずらっぽく笑った。

「なんでもするよ!」
「ほんとに?」
「うん!」
キラは、アスランの役に立つことがしたかった。

「じぁあ・・・」
言葉を切り、キラから目を逸らす。

「キラ、ザフトに協力して欲しい。
 キラをMSに乗らせるわけじゃない。
 地球軍が、民間人を戦わせたことの証人としてだ」
「アスラン・・・」
「これは、キラのためにもなる。
 AAにいるキラの友達を保護することができるかもしれない。
 AAも今は無事だが、ストライク無しではいつ墜ちるとも限らないから」

アスランは、もうキラを戦争に関わらせたくなかった。
しかし、キラがストライクに乗ってザフトと戦闘をしたのは事実。
後にそれを取りざたされる前に、キラを被害者として公表する必要がある。

キラにもアスランの言いたいことがわかった。

「アスラン。君の言うとおりにするよ。
 それに、ザフトに入ってもいい」
そうすれば、君と一緒に居られるならね。

キラの意外な言葉に、アスランがキラを見る。

「アスラン。僕は、君と一緒にいたいんだ。
 イージスとの戦闘は、とても辛かったけど。
 戦闘が無い時、君がどうしているか考えて、もっと辛かったんだ。
 傍にいたい」
迷惑かな?

「キラ・・・、いいのか?」

アスランの心は、揺れていた。
キラを戦わせたくない、という気持ち。
キラと一緒にいられることを喜ぶ気持ち。

「アスランと一緒にいることが、今一番の望みだよ」
にっこりと笑うキラには、迷いは見えなかった。

「キラは、僕が守るから」
キラを抱きしめたアスランに
「僕もアスランを守るよ」
キラも言い返した。

***end
AAに見捨てられたストライク、は辛いので
AAが近寄ろうにも、間に合わなかったということにしてください
なせイージスが間に合ったかは・・・愛の力v
けっして、アスランがAAの邪魔をしたわけでは(^^)
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