勝手にします (TV本編第3話より)


本編3話 イージスとストライクが対峙したとこから。
キラの性格が全然ちがう・・・


「キラ・・・キラ・ヤマト?」
「アスラン、アスラン・ザラ?」

「やはりキラ、キラなのか!なぜそんなものに乗っている!?」
「なりゆき、だと思う」

「・・・は?」
「な・り・ゆ・き。聞こえた?」
「・・・なりゆき、だと?」
「そう。なんか、僕しか乗れないとか言われちゃって、なんとなく」
「地球軍じゃ、ないのか?」
「ちがうよ、もちろん。
 それにしても、さっきのって、やっぱりアスランだったんだね。びっくりした。
 なんで、アスランがザフトにいるの?」

すぐ傍では、AAがジンに襲われているのだが
キラは、アスランとの再会が嬉しくて、すっかり失念していた。

「ストライク!どこにいる?AAが攻撃を受けている、援護しろ!」
「すみません、今それどころじゃないんです」
キラは、AAとの通信を切ってしまった。

***

「キ・・・キラ・・・」
ストライクとAAの会話がイージスにも聞こえていた。
「なに?アスラン?」
「い、いや。相変わらずだと思って・・・」

アスランは、幼少時のキラを思い出していた。
甘えんぼで泣き虫のキラ。
でも、甘えるのも泣き顔を見せるのも、アスランにだけだった。
いつもアスランの後を、トテトテと追ってきた。
他の友達と遊んでいても、アスランを見ると勝手に抜けてきてしまう。

「むう。なんか、馬鹿にされてる気がする・・・」
「・・・そんなことないよ。キラが昔のままで嬉しいんだよ」
「僕も!僕もアスランは変わってないと思う!」
モニター越しに笑顔を向け合った。

「おい、アスランなにしてる!さっさとそいつを破壊しろ!」
ジンのミゲルから呼びかけられ、我に返った。

「アスラン、僕と戦うの?」
キラの顔は、今にも泣きそうになっている。

「まさか!ただ、命令がそのMSの破壊なんだ」
「やっぱり、戦うの?」
涙が溢れだしてしまった。

「キ、キラ。泣かないで。違うから。戦ったりしないから。ね?」
涙を浮かべたキラを見たアスランは、狼狽えていた。

「ほんとう?」
瞳を潤ませて、上目遣いにこちらを見るキラ。

昔から、アスランはキラのこの顔に弱い。
無茶を言うキラを諫めるつもりが、毎度手伝うハメになっていた。

「本当だよ。だからキラ、僕と一緒に来てくれるかい?」
「う〜んとね、今すぐはダメ、なんだ」
「なぜ?」
「このMS、僕のじゃないから、先に返さないと」

どうもキラは、現状認識をやめているようである・・・

「それにね、あの戦艦に友達置いて来ちゃったんだ」
「置いてくるって、地球軍なのか?」
「違う、違う。あ、ヘリオポリスのカレッジの仲間も乗ってるけど。
 僕が言ってるのは、トリィのことだよ」
「・・・トリィ?」
「うん。アスランがくれた、トリィ。
 ・・・トリィがいたから、アスランのいない三年間に耐えられたんだ」

まだ、持っていてくれたんだ。
その言い方から、大切にしていたことがわかる。

「でも、キラ。あの艦はもう墜ちる寸前だ」

***

アスランの言葉に、はっとしてAAを見ると・・・
ほんとだ。煙がいっぱいで、傾いてる。

トリィ!

キラは、ストライクを素早く動かし、AAのブリッジ前に静止させた。

さっき切った通信を繋ぐ。
「ストライク!さっきから何をやっている。
 そこは邪魔だ、さっさとどけ!」
「すみませんが、ラミアス大尉を出してください」
「・・・どうしたの、キラくん。戦闘中よ?」
「降服しませんか?」
「・・・は?」
「だって、僕戦うのイヤなんです。
 AAもこんなにMSを相手に勝てないですよね?
 もう今にも墜ちそうだし。
 それに、ヘリオポリスが壊れちゃうじゃないですか」

AAのクルーはそのほとんどが新兵である。
その誰もが、キラの言葉に頷いてしまった。

「・・・投降しても、受け入れてもらえずに墜とされることもあるの」
「大丈夫ですよ。だってさっきから、攻撃止んでます」

確かに、攻撃されていない。
不思議だったが、これ以上の戦闘が無意味であることも覚っていた。

「投降信号を!」
マリューは降服することを選んだ。

***

ザフトのMSに誘導されて、AAはコロニーの外へ出た。

ストライクはザフト艦に収容されることになったので
一度AAに着艦し、キラはトリィを連れ出した。

ザフト艦ヴェサリウスに着艦し、ストライクのコックピットから出たキラは
たくさんの銃口に迎えられた。

キラは、びっくりして固まってしまったが
ストライクを囲った兵達も、MSから降りたパイロットが
パイロットスーツを身につけていないことと
あまりにも華奢な少年であるのに、呆然としてしまっていた。

そこをイージスから出たアスランが視認し
イージスを強く蹴り、キラのもとへ急いだ。

「銃を下ろせ!彼は、地球軍の軍人じゃない!」

周りの兵を掻き分けていくと、キラがしがみついてきた。
アスランにキラの震えが伝わった。

「隊長の命令だ。彼は隊長のところへ連れて行く」

***

格納庫を出たところで、抱えていたキラを放した。

「隊長って?」
「ラウ・ル・クルーゼ隊長。僕の直接の上官だよ」
「怖い?」

キラは怯えていた。
銃口をあんなに間近に、あんなにたくさん向けられたのも初めてで。
ここが、軍の中であることを強く意識してしまった。

「大丈夫だよ。僕が一緒だからね」

まだ少し震えているキラを抱き寄せ、耳元で囁く。

「キラは僕が守るから」
「・・・うん」
「隊長には、ありのまま話すだけでいいんだ」
「・・・うん。・・・ちょっと緊張するけど」

震えの止まったキラから、少し体を離し・・・

キスをした。

「あ、あすらん!?」
キラの顔が真っ赤に染まっている。
「緊張は解けただろう?」
アスランがいたずらっぽく笑う。
「な・・・!」
「嘘だよ。キラが好きなんだ。
 三年前、別れるときは自分の気持ちがわかってなかった。
 でも今は違う。僕にとって、一番大切なのがキラなんだ」
「アスラン・・・」
「キラも僕が好きだろう?」
「・・・うん///」
「じゃあ、キラもザフトに入るよね?」
「うん・・・え?なに?」
キラはつい反射的に返事をしてから、聞き返してしまった。

「僕はザフト軍人で、この戦争が終わるまで退役する気はないんだ。
 だから、キラとずっと一緒にいるには、キラがザフトに入らないとね」
アスランは当たり前のように言う。

「ま、いっか」
ちょっと呆気にとられたが、アスランといられるならキラに異存はなかった。

***end
キラ、このくらい我が道を行っていれば
あんなに泣かなくて済んだのになぁ、と。
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