女の子キラ−6 (本編6話より) | ||
「アスラン。キラさんの様子はどうですか?」 ニコルが医務室に入ると、すでにキラは起きあがっていた。 「あ、ニコルさん。すみません、たびたびご心配おかけしまして」 うっすらと頬を染めたキラが、すまなそうに頭を下げる。 「元気が戻ったみたいですね。よかった」 元気というか・・・ちょっとドキドキするなぁ。 ・・・アスランがどうやってキラさんを浮上させたかは、聞かないでおこう・・・ 「そうそう。キラさんのお友達にはラクス様がご一緒しています。 ただし、さっきの少女は拘束しました」 「フレイ・・・フレイは、彼女は・・・」 「キラ。彼女がどう思うのも勝手だとしても、人を傷つける物言いはしてはならない。 まして、このザフト軍はすべてコーディネイターだ。わかるだろう?」 「・・・うん。そうね」 「それで、アスラン。お二人でどこへ行こうとしていたんですか?」 「ああ、俺の部屋へ。士官室をひとつ用意してもらったんだ。 いつまでもここにいるわけにはいかないし、ここは人が来る可能性があるから」 ニコルは、同室なんですか?などとは言わなかった。 キラが来てからのアスランの様子から、アスランが彼女から目を離すとは思えないし 第一、彼女もひとりでは心細いだろう。 *** 「みんな、心配かけてごめんね」 アスランに伴われたキラが、ミリアリアたちに宛われた部屋に入ってきた。 「キラ!」 キラを目にしたミリアリアが、キラに抱きついた。 「キラ、キラ、ごめんなさい。私、知らなくて。ずっと辛かったでしょう」 「ミリアリア・・・」 突然謝られて、なんのことかわからず、見回すと 「キラさまとアスランのことを説明させていただきました。 私が知る範囲のことではありますけど」 「ラクス・・・、あ!すみません、私ったら勝手にラクスさんを呼び捨てに!」 「あら、かまいませんのよ?親しく思っていただいている証ですもの」 「あ・・・じゃあ、私もキラって呼んでもらえますか?」 「はい」 にっこりと笑い会う。 「ミリアリア、謝ってくれることは何もないわ。私が勝手にやったのよ」 泣かないで?ね? 「でもでも、好きな人と戦うなんて、そんなこと!」 「もう、済んだことなの。ね?泣き止んで、アスランを紹介させて」 肯いたミリアリアから離れ、キラはアスランを傍に手招く。 「ラクスから聞いてるみたいだけど、あらためて。 彼がアスラン・ザラ。私の幼なじみなの。で、イージスのパイロット」 「初めまして。実のところ、君たちにはいろいろ恨み言を言いたかったんだけど」 言われた四人は、びくっとして、顔を歪めた。 「アスラン!」 「だけど、あのナチュラルばかりの艦で、キラを守ってくれたのは君たちだ。 ・・・ありがとう」 頭を下げたアスランに、四人は慌てる。 守ってもらったのは自分たちである。 感謝するのも自分たち。 たが、なんと言えばいいのか、咄嗟に出てこない。 「あ、あの!キラは、これからどうなるんですか?」 「君たち民間人に関しては、準備が整い次第、オーブ本国へお送りする。 キラについては未定だ。だが、本人の意思が尊重されることは保証する」 「キラが罰せられるとかはないですか?」 「キラは地球軍に利用されただけだ。そうだろう?」 「「「「はい!」」」」 *** 和やかに、おしゃべりをしている部屋へ、ニコルが来た。 「アスラン。隊長がこちらへ来ました。・・・キラさんを連れてくるように、と」 四人が気遣わしげにキラを見る。 「キラ。・・・事実を述べるだけでいいから」 「うん。アスラン。大丈夫」 「みんな、後でまた来るから。・・・ラクスはまだここに?」 「はい。みなさんの事は、私にお任せ下さいな」 「うん。ラクスが居てくれれば安心だわ。ありがとう。 じぁあ、またね」 キラは、アスランとニコルと共に出ていった。 *** 部屋には、隊長だという人物の他に、イザークとディアッカもいた。 「初めまして。クルーゼ隊隊長、ラウ・ル・クルーゼだ」 「初めまして。キラ・ヤマトです」 「君の身元や経歴は、既に調査・確認が済んでいる。 だから、君に聞きたいのは、あのMSについてだ」 「はい。何をお話すれば良いのですか?」 「あのMSが最初に起動した時、かなり危なげな動きをしていたのに 戦闘中に、急に動きが良くなったのを映像で見たのだが」 いったい何があったのか、というので キラはありのままを話した。 モルゲンレーテに居た事情。 偶然工場区に入り込んだこと。 地球軍の士官が、安全な場所まで連れ出してくれようと あのMS=ストライクに同乗させてくれたこと。 その士官はMSをうまく操れず、またOSが稚拙で、戦闘は無理だったこと。 アスランもまだそのあたりの事情は聞いていなかったが キラがストライクに乗ったところは見たし GのOSがまったくなっていなかったのもイージスで知っている。 「工場を出て、ジンが襲ってきたのを避けようとしたストライクの足下に 私の友達がいたんです。避難所が見つけられなくて。 そのままではストライクに踏まれてしまうところだったので・・・咄嗟に」 「ジンに体当たりしたところかね?」 「はい。とにかくどうにかしなくてはと思って、その後すぐ、OSを書き換えました」 「ジンと戦いながら?」 「・・・はい。もとのままでは、思うようには動かせなかったんです」 これを聞いていたアスラン以外の面々は、信じられなかった。 民間人、つまり訓練を受けていない素人の少女が 自分たち、仮にもエースパイロットといわれる自分たちと 対等に渡り合っていただけでも驚きだったのである。 それが、戦闘中にMSのOSを書き換えるなど、自分たちにもできることではない。 キラは、目の前の隊長や周りにいるアスランの同僚達が 自分をじっと見つめるのに気づき、困惑した。 「アスラン、私、なにかいけないこと言った?」 不安そうに言うキラを安心させるように、アスランはキラの肩に手を置く。 「いいや。キラは事実を言っているんだろう? ちょっと意外なことを聞いて、みんなびっくりしてるんだよ」 「意外なこと?」 「そう。キラがプログラミングが得意で早いことは、僕しか知らないからね」 キラはプログラミングのスピードが凄まじく早い。 だが、なにやら独自の方法をとるので、教授には憶えがよくなかった。 だから、キラの経歴として、幼年学校の成績を見ただけではわからないのだ。 よくわからないが、アスランが良いというのだから、いいとしよう。 キラは、次の質問をしてくれない隊長に言う。 「隊長さん。あと何を話せばいいですか?」 「あ?あ・・・ああ。すまない。 すると、ストライクのプログラムはすべて君がやっているのかね?」 「はい。AAは人手不足で。自分の機体は自分でしろと言われました」 別に、私のというわけではないはずなんですけど・・・ キラはため息をついた。 「それでは今、あの機体にロックを掛けたのは君というわけだ」 「え?あ、すみません!あの、わざとじゃないんです!忘れてました・・・ アルテミスに入港する時に、フラガ大尉にロックしておくようにいわれて。 起動するたびにロックを解除しなければならないようにしてしまったんです。 ここに来た時、そのことすっかり忘れて、普通にダウンさせちゃいました」 反抗しているとか思われたらどうしよう!と、おろおろするキラ。 「実は、うちの技術者にそのロックの解除ができなかったんだよ」 「キラのプログラムは変わってますからね。 初めてみた人がどうにかできるわけありません」 はっきり、きっぱりと、胸を張ってアスランが言う。 やっと念願叶ってキラがそこにいるので、気が大きくなっているらしい。 だが、周りで聞いていたものたちは、自軍の技術者が民間人に叶わないのを そんな嬉しそうに言わないで欲しいと、思った。 気を取り直し、クルーゼがキラに向かう。 「では、君にはこの後、そのロックを解除してもらいたい」 「わかりました」 「それで、だ。ここからが本題なのだが・・・」 そう言って、クルーゼはアスランをちらっと見た。 「君はこれからどうしたいかね? 君がオーブの民間人であることは承知している。 だから、君が望むならば他の民間人と共にオーブ本国へ送ることもできる。 しかし、私としては君には是非、この艦に残って欲しいんだがな」 「隊長!キラは戦争が嫌いなんです!もうMSになんて・・・!」 キラが答える間もなく、アスランがクルーゼに言いつのる。 「パイロットにするとは言ってないぞ、アスラン。 彼女には、技術者として君たちのフォローを頼みたいのだ」 「それでも・・・!」 「アスラン、待って」 尚も言おうとするアスランを、キラが止めた。 「隊長さん。私がここに残るということは、ザフトに入るということですよね」 「もちろん、そうなるな」 「私は地球軍として戦っていました。果たしてザフトの方たちは、私を受け入れますか?」 「すでに受け入れられているだろう。 ここにいる君と直接戦闘を行ったパイロットたちに聞いてみるかね?」 キラが見回すと、ニコルが 「キラさんが僕達の仲間になってくれると、嬉しいですよ。 それに、キラさんが艦を降りたら、アスランが心配してどうにかなっちゃいますよ」 と言って笑う。 ディアッカは 「まぁ、この艦には女性兵士が少なくて寂しいんだ。 君が居た方が楽しくていいね」 と言って、アスランに睨まれた。 イザークも 「居たいなら居ればいい」 と、無愛想ながらも、キラを容認する言葉を述べた。 「キラ。キラの自由にしていいんだ。 確かに、一緒にいられれば僕は嬉しい。 けど、キラが望まないことをさせたくはないんだ。」 アスランも、キラが近くにいるのを望んでいる発言をする。 悩んでいるらしいキラにクルーゼは オーブからの迎えと合流するまでによく考えて決めるようにと言った。 *** next |
||
もうここまでくれば、じきに終わりですよね。 それ以上は書けないしね。 では、また明日・・・かな? |
||
Top | Novel | |||||||
since 2003.09.28 |