無人島で (本編24話より)


TV本編第24話の終了間際
アスランにニコルの通信が届く前に、キラが着いたってことで。


カガリの行方がわからなくなった翌日。

ストライクで海を移動しながらカガリを探していたキラは、
浅瀬に乗り上げたスカイグラスパーを発見した。

近寄ってみるが、カガリは乗っていない。
泳いで上がったのだろうと、ストライクを上陸させた。

「カガリーっ!カガリーっ!」
キラは、大声で呼ぶが、返事はない。
仕方なく、奥へ行ってみることにした。

***

「・・・リーっ!・・・ガリーっ!・・・」

かすかに聞こえる人の声に、アスランは目覚めた。

誰だ?・・・彼女を探しているのか?

すぐ傍で、ぐっすりと眠っている少女を見た。

彼女には聞こえていないようだな・・・
地球軍ではないと言っていたし、昨日の様子でも軍人とは思えない。
だが・・・敵、ではある。
つまり、探しに来た者も敵ということになる。

アスランは銃を握り、警戒しながら洞窟を出た。
イージスがあるのとは反対側、彼女の機体の方から聞こえてくる。

声のする方へ向かったアスランは、生い茂る木々の間から、声の主をうかがった・・・

「キラ・・・」
意表をつかれ、つい、声が出た。

***

「カガリーっ!カガリーっ!」

はぁ。カガリ、何処にいるのかなぁ。
スカイグラスパーの状態からすると、無事、のはずなんだけど。

この島は、広さはたいして無いようなのだが、起伏がはげしい。

まさか、反対側まで行ってるんじゃないよな。
普通、目印にもなる機体からそう離れないと思うんだけど。
カガリ、ちょっと違うからな。

キラは、目の前の岩壁を見上げた。

登れないことはないけど・・・ストライクで行ったほうが早いか。

ため息をひとつついたキラが引き返そうとした、その時。
声が聞こえた。

「キラ・・・」

振り向いたキラの目に、赤いパイロットスーツを着たアスランが映った。

アスラン?ほんとに?

驚きに目を見はり、咄嗟に動きが止まったキラだったが、
次の瞬間、アスランに向かって駆けだした!

「アスラン!」
「キラ!」

飛びついたキラを、アスランはしっかりと抱きしめた。

「アスラン!アスラン、アスラン、あすら・・・ん・・・っ」

アスランの首にしがみついたまま、キラは泣き出してしまった。

「あ・・・らん、逢いたかっ・・・だ、・・・は、プラントへ・・・、でも僕・・・
 友達が・・・で、アスラン・・・・・・フトに・・・、・・・けなくてっ・・・」

泣きながら話すのだが、声が詰まってしまう。
アスランはそんなキラの頭や背中を撫でてやり、好きなだけ泣かせた。
キラ・・・、と優しく呼びかけながら。

***

アスランは、強くしがみついているキラに、その切れ切れの言葉に、
ヘリオポリス以来、キラもずっと苦しんでいたのだと実感した。

慣れない戦闘、死闘。
コーディネイターだからと蔑視する、クルー。
友達との不和。

辛い、と。
戦いの無い時も心が安らぐことがないと。
進むことも、引き返すことも誰かを裏切ることになると。

なにより、アスランの手を取れない今の自分が悲しい、と。

キラに、そっと囁く。
「キラ。俺がさらってあげる。
 裏切りじゃないよ?キラの意志を無視して、俺が連れていくんだから」

***

キラはその言葉に驚いて、思わず顔を上げ、アスランと目を合わせる。

アスランはキラの唇に、自分のそれを押しあてた。

「キラ、愛してる」
「・・・え?」
「俺は、キラが一番好きだ。愛してる。・・・キラは俺のことどう思ってる?」
アスランが僕のことを好きって言ったの?
「・・・嘘!だってラクスと婚約してるって!」
「あ、ああ。あれは父達が勝手に決めたんだ。
 キラと逢えた今、ラクスと結婚するつもりはない。
 ラクスも承知の上のことなんだ。彼女にも、別に愛する人がいる」
「ホントに?だってラクスが言ったんだよ?」
「一応、建前ではそうしているんだ。でないと、次の縁談を持ってこられるからな」
「・・・好きアスランのこと、一番・・・好き
聞こえた?

キラが恥ずかしそうにアスランを見上げると
アスランはとても嬉しそうに笑った。

ひさしぶりに見た、アスランの笑顔。僕の大好きな。
再会してから、僕はずっとアスランの手を拒絶して、アスランに辛そうな顔ばかりさせていた。
僕が、アスランを悲しませていたんだ。
馬鹿だ、僕。自分だけが辛いと決めつけてた。
友達は大事だけど、アスランの方がもっと大事なんだ。
なんでもっと早く気づかなかったんだろう・・・

「アスラン・・・連れていって。どうすればいい?」

「アスラン?」
「キラは一人で来たんだろう?」
「うん。あ・・・でもフラガ大尉も・・・あっ!そうだ、カガリを!」

すっかり本来の目的=カガリ探索を忘れていたキラは、
あせって辺りを見回した。

「アスラン、女の子見なかった?」
「・・・金髪の子なら知ってるよ。それが?」
「僕、カガリって女の子を探していたんだ。
 こっち方面に来たのは僕一人だけど、
 フラガ大尉もスカイグラスパーで上から探してるんだ」
「方向は違うんだな?」
「うん。二人とも、二時間で一度、艦に戻ることになってる」
あと、一時間くらいかな。
戻らなければ、僕を探しにこっちへ来ると思うんだ。

「キラ!」
唐突に、カガリの声がした。

***

目覚めると、傍らに居たはずのザフトのパイロットが居なかった。
外に出て見回すが、やはり居ない。
MSにでも行ったのかな?

カガリが崖から見下ろすと、そこには、ストライクの姿があった。

キラ!探しにきてくれたんだ!

目を輝かせて下へ降りていくと、忘れていたザフト兵の姿が見えた。
その陰に、キラらしき人影が!

「キラ!おまえ、キラに何してるんだ!
 キラ、そいつはザフトだぞ、離れろ!」

***

カガリには、アスランがキラを捕らえているように見えたらしい。
確かに、敵同士なのだからそう思うのが当然だった。

「カガリ・・・」

キラは、アスランから身を起こしてカガリを見た。

「カガリ、というのだな。地球軍ではないと言ってなかったか?」
「っ、地球軍じゃない。・・・艦には乗っているけど」
「艦に乗って、戦闘機に乗っていて、な。まあ、違うならいいか」
「なにがいい?」
「キラは俺が連れて行く。
 しばらくすれば、フラガ大尉とやらがこっちへ探しにくるそうだから。
 君はここで待っていればいい」
「ふざけるな!キラを捕虜にでもする気か!」
「まさか。キラは俺が保護するんだ」
「保護?」

カガリがキラに顔を向ける。
キラは、目を逸らした。

「キラ?どういうことだ?」

キラは答えられなかった。代わりにアスランがカガリに話す。
「キラはコーディネイターで民間人だったんだ。
 それを地球軍が、戦わせた。できるから、と。
 戦わなければ、自分も友達も死ぬと言って。
 訓練も受けていない、素人を無理矢理戦わせるようなところに、
 これ以上、キラを置いてはおけない。わかるだろう?」

カガリが、俯いたキラを見て問う。
「キラ、おまえ、こいつと知り合いなのか?」

「・・・うん。彼は・・・アスランは、僕の幼なじみで、僕が一番好きなひとなんだ」
キラは顔を上げ、カガリの目を見て、はっきりと言った。

「だって・・・こいつはあのイージスのパイロットなんだぞ?」
「だから!だから、もう、アスランと戦いたくない・・・」
気持ちが高ぶり、声が震え、また泣きそうになっていた。

「キラ・・・」

カガリは今度はアスランに向かって問う。
「だが、キラは地球軍としてザフトと戦った。それは事実だ。
 そんなキラを連れて行けば、やはり捕虜として扱われるんじゃあないか?」

「それでも、かまわない!それで、もうアスランと戦わなくていいなら!」
「キラは俺が守る。捕虜として扱わせたりはしないよ」
「本当だな?」
「ああ」

「・・・フラガ大尉は、いつ来るんだ?」
「え?」
「キラがアークエンジェルへ連れて行ってくれないなら、大尉を待たなきゃならないだろうが」
「・・・ありがとう。大尉は、おそらく2〜3時間以内には来ると思う」
「そうか。
 アスラン?ザフトの迎えはいつ来るんだ?大尉のが早くちゃ話にならないぞ」
「ジャマーの影響を受けにくい距離まで来ているようだ。
 少し前から、アラートが鳴ってる」
「じゃあ、そっちが先に着くか。
 キラ、ストライクをイージスの方へ持っていってくれよ。
 ザフトにスカイグラスパーは見られない方がいいからな」

カガリは、キラを抱きしめた。
「お別れは言わないからな。戦争が終わったら、逢いに来いよ」
「・・・どこに行けばカガリに逢えるのかな・・・」
カガリはレジスタンスを出てきてしまった。
このままアークエンジェルでアラスカまで行くとも思えないし。

「オーブにいる。絶対逢いに来いよ。いいな」
「うん。必ず」

「じゃあ、またな!」
「うん、また逢おうね!」

***end
またしても長々と・・・
その割に、ラストは簡単にまとまってしまった・・・
やっぱり、眠いとダメだよね。
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