気がついたら (本編3話より)


TV本編第3話
ヘリオポリス内のAAに、ザフトが再攻撃しかけてきたところ


「キラ・ヤマト、ストライク出ます!」

アークエンジェルを発進すると、すぐにMS戦が始まった。

ストライクは、ジンの攻撃をことごとくかわす。
だが砲撃を避ける度・避けられる度に、コロニーのシャフトが切れていくのだ。

くっ・・・どうすればいいんだ・・・

MSには人が乗っている。
墜とせば、死ぬ。
だが、避けるばかりでは、いつか自分が墜ちる。
そして、コロニーはどんどん破壊されていく・・・

なんで・・・なんでこんなこと・・・
っ、とにかく、攻撃を出来なくさせればいいんだ!

ジンの頭部や腕を切り落す。
戦闘不能になったジンは、離脱せざるをえない。

「よかった・・・まず一機。次は・・・」
はっ!あれは・・・あれは、あの時の?

ストライクに迫る赤い機体。
X303、イージス。

「アスラン、まさか君が乗ってるんじゃないよね・・・」

イージスがストライクに斬りかかる。
それを受ける、ストライク。
・・・対峙する、二機。

『キラ!キラ・ヤマト!』

ストライクに、目の前のイージスから通信が入る。

え?
『アスラン?アスラン・ザラ?』
『やっぱり、キラだったのか!なぜそんなモノに乗っている!?』
『アスランこそ!君がなんで軍にいるの!?』

戦争なんて嫌いだって言っていた、あの優しいアスランが!

言葉が続かず、モニター越しに、だだ相手と見つめあう。

それぞれの僚機からの呼びかけが繰り返されているのだが、
二人とも、反応することができないでいた。

そしてとうとう、コロニーが崩壊し始めた。
地表にある様々な物が、崩れた外壁から吸い出されていく。
MSも自由が利かなくなってきた。

『コロニーが・・・ヘリオポリスが・・・あぁ・・・』

モニターに映るキラが驚愕し、自失しているのを見たアスランは、
イージスを変形させ、ストライクを捕縛した。
だが、キラは気づかない。
ヘリオポリスが壊れていくのを目の当たりにして、震えていた。

『あ・・・あ・・・イヤだ、なんで・・・父さん?母さん?・・・あぁぁぁっ!』

ヘリオポリス崩壊の勢いに流されている間に、キラは気を失ってしまった。

***

目の前に、アスランがいた。
心配そうな顔をしている。
そう、月に居た頃、僕が隠し事をしたりする度に、こんな顔してた・・・
って、なんで?あれ?

キラは周りを見回した。

「医務室?だよね?あれ?なんで僕ここに?」
「キラ。憶えてない?」
「僕、ストライクに乗っていたよね?」
それで、友達を守るためにジンと戦って・・・
アスランが来て、そして・・・
「ヘリオポリスが崩壊・・・」

アスランは、顔を歪めたキラを強く抱き寄せた。
キラは、アスランの胸に顔を伏せ、声を上げて泣き出してしまった。

***

キラの頭を、アスランがそっと撫でてくれる。
落ち着いてきたキラは、ゆっくりと顔を起こした。

「大丈夫かい?」
「うん。ありがとう」

アスランに向かい、にこっと笑う。

小さい時のように、わぁわぁと泣いてしまったのが、気恥ずかしかったけれど。
昔に戻った気がして、とても嬉しかった。

「ここは、ザフト艦?」
「ああ。ヴェサリウスというんだ」
「・・・僕は、どうなるの?捕虜?」
「まさか。民間人を捕虜にしたりしないよ。
 れっきとした、ヘリオポリスの工業カレッジの学生なんだから」

なんで知ってるの?
疑問が顔に出たのだろう、すぐに教えてくれた。

「ごめん。ここは戦艦だし、あれは地球軍のMSだから、
 一応、ボディチェックと身元確認が必要だったんだ」
「あ、うん。それはいいけど。当然だよね」

「・・・アークエンジェルは、どうなったの?」
「アークエンジェル?・・・ああ、地球軍の新型艦のことかい?」
「うん。あれには、友達が乗って居るんだ」
「友達?地球軍に居るの?」

キラは、モルゲンレーテでのことから全て、アスランに話した。

「そうか、あの艦に民間人が乗っているのか」
「うん」
「あの艦・・・アークエンジェルはロストした。見失ったんだ」
「じぁあ、無事なのかな?」
「おそらくな」
「そう。よかった」
「友達のところへ、戻りたいか?」
「・・・戻りたく無いって言ったら嘘になるけど、アスランの敵になるのはヤダ」

アスランが、とても嬉しそうな顔で笑う。

「ふふ。やっと会えたな」
「うん。三年ぶりかな?
 アスラン、いちだんと格好良くなったね」
「キラは、綺麗になったよ」
ア・・・アスラン・・・顔が赤くなっちゃうよぉ。うう。

真っ赤になって俯いたキラに、
アスランはその頬に手をあて顔を上げさせると、そっと、触れるだけのキスをした。

キラは目を見開き、間近にあるアスランの顔を見つめていたが、
再び顔を寄せられると、目を閉じた。

もう一度唇を合わせ、耳元で囁く。

「キラが好きだ。愛してる」

びくっと震えたキラを、アスランはそっと抱きしめた。

「ぼ・・・僕も。僕も、アスランが好きだよ」
また、耳まで赤くなりながら、しかし、はっきりと言った。

しっかりと抱きしめ合ってから、ゆっくりと体を離した。

「疲れただろう。少しお休み」
え・・・でも・・・せっかく会えたのに。

「同じ艦に居るんだ。時間はたっぷりとある。
 元気になってから、ゆっくり話をしよう」
「うん。そうだね」
安心したら、あくびが出た。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
アスランの微笑みを見てから、目を閉じた。

***

キラが眠るのを待って、医務室を出た。

帰艦後、ずっとキラに付いていたので
隊長への報告をきちんとしていなかったのだ。
(最低限、キラを艦に乗せる許可だけはもぎ取ったけれど。)

まっすぐに、隊長室へ行く。

「アスラン・ザラ、参りました」
許可を待って、部屋へ入る。

「彼は、どうしたね?」
「一度、目を覚ましましたが・・・疲れているようなので、休ませました」
「目覚めたら、彼を連れてくるように言ったはずだが?」
「はい。しかし、精神が安定してからの方が、話は聞きやすいかと」
「ふむ。まあよかろう。それで?君からの報告は?」

キラについて、先ほどキラから受けた説明をまじえて報告をする。

「なるほどな。しかし・・・彼の処遇はどうしたものか・・・」
「処遇とは?」
「捕虜ではない。だが、我が軍と敵対行為を行ったのも事実。
 彼により、ジン二機が破壊された。まあ、死人は出ていないがな。
 それに、整備班から興味深い報告も受けている」
「キラについて・・・ですか?」
「あのG、ストライクと言ったか。あれのOSなのだがな、
 先に奪取した四機とは、まったく違うOSが組み込まれている。
 どう見ても、ナチュラルにどうにかできるものではないというのだ」
「キラがやったと?・・・そうですね。キラならできると思います」

***

「キラ、キラ、起きて?」
目を開けると、すぐ近くにアスラン。

「おはよう」
アスランがにっこりと笑う。

「おはよう。どのくらい寝たんだろう。すっきりしてる」
「はは。よかった、元気になったね」
「うん」
えへへ。夢じゃなかったんだ。本物のアスランだ。

「それでね、隊長が話したいそうなんだ。いいかい?」
「え・・・あ、うん。尋問?」
「キラは捕虜じゃないから違うよ。
 さっき話してもらったことは説明したけど、いくつか訊きたいことがあるんだって。
 僕もいっしょに行くから安心してね」
「うん」
アスランがいっしょにいれば、何も怖くない。

***

「では、ストライクのOSを書き換えたのは、君自身なんだね?」
「はい、そうです」

隊長さんが知りたいというのは、ストライクのことだった。
まあ、当然だよね。
隠すようなことは何もないので、ありのまま答えていく。

「だが君は、あのMSの開発には関わっていないんだろう?学生だというし」
「あ、はい」
「それではいつ、書き換えたのかね?」
「最初に乗った時に。
 地球軍の女の人が操縦したんですけど、歩くのもままならなくて。
 なんでも、まだ終わってないってことでした。
 ジンは攻撃してくるし、足下には人がいるのに踏みそうになって。
 仕方が無いので、その場で書き換えました」
「ほう。すごいな。システム関係が得意なのかな?」
「はい。というより、それだけが得意なんですけど」

「君は、この後、どうしたいかね?
 残念ながら、ヘリオポリスは既に無い。
 君のIDはオーブだから、地球へ行きたいかな?」

そうだ。ここはザフト軍の艦なんだから、いつまでも居られないんだ。

答えないキラに、アスランが声を掛ける。

「キラ。地球もプラントも月も、ここからは距離がある。
 どのみち、キラ一人のために、この艦が進路を変えたりはしない。
 考える時間はあるよ」

できれば、一緒にプラントに来て欲しいな。
アスランはそう言ってくれるけれど、どうすればいいんだろうか。

「少し、考えさせていただけますか?」
「かまわんよ。アスランの言うとおり、時間はある。
 しかし、そうだな。この艦にいる間は、仕事を手伝ってもらえるかな?」
「僕、戦うのはもう・・・」
「いや、民間人の君にそんなことはさせないよ。
 ただ、ストライクのOSはとても出来が良いということなのでね。
 他の四機のMSについても、やってみないか?」

う・・・ん。そうだよね。いわば居候なんだから、何かしなくちゃ。
それに、それならアスランと一緒に居られる時間が出来るよね。

「わかりました。やらせていただきます」
「よし。では明日から早速頼む」
「はい」

***end
中途半端に終わらせてしまいました。
なんか、つらつら書いていて無駄に長くしてしまったら、眠くなっちゃいました。
そのうち、気が向いたらなんとかするでしょう・・・たぶん。
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